食事を一緒にとっている時はずっと「お母さん聞いて!」と学校の友達との他愛ない出来事を一生懸命に話す。習い事の話やら、家族旅行の旅先での話やらも、とにかく話し続ける。日頃お母さんに伝えられないもどかしさが、よほどたまっていたのだろう。一緒に暮らしていた時はうまく折り合いがつかなかった母と娘だけに、娘のほうは自分が頑張っていることを伝えて認めてほしかったのだろうとも思う。

「やっぱりお母さん好きなんだなぁ」と感じるたびに私の心は、ホッとする思いと虚しい思いが相半ばするのだが、月1回、食事をとるだけのわずかな時間だから、ただ楽しく過ごすようにつとめる。かつて家庭円満に暮らしていた時代がひと時ではあるが復元され、家族で囲むテーブルは盛り上がる。

「共同親権」は
生易しいことじゃない

 盛り上がった分、困るのは、別れ際である。

「お母さん、しばらく会えない……」と、今生の別れであるかのように泣きじゃくる娘。「またすぐに会えるから、大丈夫だよ」と再会を約束するお母さん。

 なんだかドラマのクライマックスのようなワンシーンだが、娘をお母さんから引きはがして連れて帰る私の心労は誰も気にしてくれない。つくづく、シングルファザーは孤独だとため息が出る。