育て親に
必要な割り切り

 そもそも、夫婦がやむをえず離婚を選ぶ理由は、お金や暴力ということもあるだろうが、主には性格が合わないからだ。生まれも育ちも違う人間どうしであれば、価値観が異なるのが普通だし、子育てに対する考え方もやはり異なる。お互いの関係が良好であればこそ、2つの価値観を掛け合わせて今までにない生活を設計していく困難に、喜びを見出せる。

面会交流の別れ際に泣きじゃくる娘…シングルファザー住職が明かす最も孤独を感じる瞬間『住職はシングルファザー』(池口龍法著、新潮新書)

 あいにく夫婦仲が冷え切って離婚してしまえば、この喜びが失われる代わりにしんどさからも解放される――はずが、面会交流などのタイミングでは、子供たちへの「そろそろ塾に通うの?」みたいな何気ない一言にも、元妻の価値観が割り込んでくる。私のほうは生活費を倹約して暮らしていても、たまにしか会えない元妻はプレゼント攻勢をかけて甘やかす。いずれも善意なのはわかるが、フラストレーションがたまる。

 お互いの価値観は、どちらが正しくて、どちらが間違っているわけでもない。でも、子育ての現場にいるのが私である以上、「お父さんの考え方が正しい」と割り切ってしまわないと、勉強への向き合い方もお金の使い方もしつけがしにくくなる。お母さんのことは「間違っている」とは言わないが、とことん趣味に没頭していた時代の豪快なエピソードを引き合いに出しつつ、「ちょっと変わった人やからお手本にならん」というぐらいに言い聞かせることにしている。お坊さんの中でも変わり者とされる私が言うのも、滑稽でしかないのだが。