優れたコメディは観客にヒントを与える

 この手のネタが受けるのは、誰もが心のどこでは差別的だとは思いつつも「それってあるある!」と思わず笑ってしまうからだ。ステレオタイプをあてはめられた人種の観客達でさえも思わず爆笑したりする。

 もちろん一歩間違えばプロとして命取りになりかねない綱渡りのような人種ネタだが、アメリカで最大のマイノリティである黒人コメディアンの多くにとっては十八番である。黒人コメディアンたちは、他の人種の批判に終わるのではなく、時に自分たちに向けた、自虐的なユーモアもうまく使っている。

 そして、優れたコメディアンは、ステレオタイプを笑いに昇華することで白人の基準で作られたアメリカという国の矛盾を突くなどして、観客に考えるヒントを与えたりもしてきた。  

 そうした中、このところ活躍が目立つのがアジア系のコメディアンたちである。彼らがもたらす笑いには、同じアジア人である私たちも学べるところが多い。例題として、「アメリカのカネ持ちの自慢話」を具体的に見てみよう。

 最近、日本でも知名度が上がっているジミー・ヤン(Jimmy O. Yang)は、中国系アメリカ人のスタンドアップコメディアン・俳優だ。香港生まれで14才の時に家族とアメリカに移住した。