ソニーグループは2021年3月期決算で純利益が初めて1兆円を超えた。復活劇の要因は、「ソニーらしさ」を取り戻したこと。不採算事業を売却する一方、コンテンツビジネスを強化して業態転換を進めた。映画『鬼滅の刃』や音楽ユニット「YOASOBI」はその象徴だ。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
復活劇の最大の要因は
「ソニーらしさ」を取り戻したこと
2021年3月期の本邦企業の決算が出そろった。その中で最も注目されるのが、ソニーグループ(ソニー)の純利益1兆円超えのニュースだ。同グループの純利益は、前年度から約2倍増の1兆1718億円と初めて1兆円を超えた。専門家の間でも、これによってソニーの復活劇が鮮明化したとの見方が出ている。
復活劇の最大の要因は、なんといっても「ソニーらしさ」を取り戻したことだろう。ソニーらしさとは、「感動の創造」だ。ソニーはモノづくりの技術に磨きをかけることによって、それまでにはなかった鮮烈な音楽や映像の体験を人々に与えた。さらに同社はコンテンツビジネスを強化して業態転換を進め、より多くのファン(需要)を獲得した。映画『鬼滅の刃』や音楽ユニット「YOASOBI」のヒットなどはその象徴だ。
今後3年間でソニーは知的財産や技術開発などのために2兆円の投資を行う方針だ。米国ではアマゾンが大手映画会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)の買収を発表するなど、ソニーを取り巻く事業環境は厳しさを増しているが、映像系センサーなどのモノづくりに磨きをかけ、それを有力なコンテンツ創出と結合することによって同社がさらなる成長を実現することは可能だろう。