薬不足を打破する一手として、国はジェネリック医薬品(後発薬)業界の再編を求めている。現在約190あるといわれている後発薬メーカーは何社まで減るのか。覇者になるのはどこか。特集『薬不足はいつ終わる?ジェネリック再編』の#4では、後発薬業界再編予想図を大公開する(ダイヤモンド編集部 野村聖子)。
「後発品業界は5年程度で再編を」
政府が報告書で提案
「経営者の関連法令を遵守する意識の欠如」「不健全な企業文化」「企業としてのガバナンス」「組織体制の不備」――。
ジェネリック医薬品(後発薬)最大の業界団体である日本ジェネリック製薬協会は、小林化工を発端とした後発薬メーカーの相次ぐ品質不正問題の原因をこう結論付けた。国民の命と健康を預かる医薬品製造販売業者にしては、あまりにもお粗末だ。
このような企業体質を生み出す背景には、市場規模に対して企業数が多すぎるという後発薬業界の産業構造問題も根本にある(本特集#3『なぜ日医工や沢井製薬ら大手まで品質不正に手を染めたのか…「空前の薬不足」を招いたジェネリック医薬品業界の闇』参照)。
後発薬は今や処方薬のシェアの8割を占めており、メーカーの品質不正問題は医薬品全体の供給不全に直結する。事実、小林化工の事案発生から今年4回目の冬を迎えるが、薬不足は未だ解消の見込みが無い。
市場規模に対して企業数が多すぎる点についてはかねて指摘され続けてきた。過当競争で薬価が低下し、薬価の毎年改定導入で価格の下落速度は倍増。海外と比較すると、エンドユーザーである医師や薬剤師たちに「必要以上にハイスペックな後発医薬品が求められ製造コストが高くなる」(業界アナリスト)こともあり、新薬メーカーや外資の一部はすでに市場から撤退済みだ(本特集#2『第一三共・エーザイ・田辺三菱製薬…国内製薬大手が、処方薬の8割を占めるジェネリック市場から軒並み撤退した理由』参照)。
後発薬を扱う企業のうち約6割は後発薬を主たる事業としている上、医療用医薬品には必ず一定の需要があり、景気に左右されずいくら低収益でも売り上げは立つ。だから、新薬メーカーなどのように後発薬以外の事業が主でない、あるいは外資でなければ、企業自ら撤退を決めるのは極めて厳しい。
そして、前述のとおり現在処方薬における後発薬のシェアは国が目標としていた8割を超えたのだから、これ以上の市場拡大は望めない。ということは、薬不足の根源となっている後発薬業界の構造問題解決には外的圧力で淘汰、再編を促すしかない。
政策の基本骨格である2024年度の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針2024)にも「足下の医薬品 の供給不安解消に取り組むとともに、医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品業界の理想的な姿を見据え、業界再編も視野に入れた構造改革を促進し、安定供給に係る法的枠組みを整備する」とあり、薬剤ごとではなく企業評価によって薬価を決める制度の導入や、M&A(企業の買収・合併)の際の税制優遇策など、国は後発薬業界の再編・淘汰を促す施策を次々繰り出している。
今年4月に公開された政府の専門家会議がまとめた報告書案は、5年程度の集中改革期間を設けて業界再編を促すのが柱となっている。
では、再編後の業界はどのような姿になるのか。次ページではその予想図を公開する。