実は、お隣の韓国でも、10年ほど前から若い世代において「寝そべり族」的な諦めが浸透してきている。
恋愛・結婚・出産を放棄する若者を指す「三放世代」という言葉が2011年頃に生まれ、それに就職やマイホームを加えた「五放世代」、さらに人間関係や希望も捨て去る「七放世代」に発展し、最終的にはすべてを諦める「N放世代」が登場した。住宅コストの高さや雇用状況の悪化などが直接的な引き金になっている。
アメリカ、日本、中国、韓国といった国々の若者たちに共通しているのは、過酷な現実に適応するための自己防衛的なライフスタイルの選択という側面である。しかも、これは世代論でくくれないムーブメントであることに注意が必要だ。
例えば、日本では壮年・中年の人々の間にも、不安定な経済状況や技術革新による脅威などへの対処として、セミリタイア的な働き方を志向したり、あるいはミニマリズムに傾倒したり、日常生活のささいな事柄に喜びを見いだす幸福論などを取り入れるダウンシフト的な移行がみられるからだ。
必要なのは努力ではなく「見極め力」
タイパ重視で成功したい若者たち
近年の自己啓発書の傾向に言及しつつ、ひろゆきブームに象徴される日本社会の展望に関して触れたい。筆者が撮影した1枚の写真を見ていただきたい(写真1‐2)。これは2021年12月31日に新宿の紀伊國屋書店で筆者が撮影したものだ。
『1%の努力』の左側に『エフォートレス思考努力を最小化して成果を最大化する』(かんき出版、2021)という本がある。シリコンバレーのコンサルティング会社THIS Inc.のCEOグレッグ・マキューンの著作であり、40万部を突破した前著『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(かんき出版、2014)の第2弾である。
マキューンは、多数の選択肢の中から本質的なものを見分けることこそがエッセンシャル思考の真髄だとし、本当に重要な物事を見極めるために必要なこととして、「じっくりと考える時間」「情報を集める時間」「遊び心」「十分な睡眠」「何を選ぶかという厳密な基準」の5つを挙げている。実はこれは、ひろゆきが自著でしつこいほど訴えているスタンスでもある。
そして、努力に対する考えにおいても両者は共通している。マキューンは、「『努力した分だけ報われる』というのは、ただの幻想だ」と述べ、「努力と根性でやりとげるのではなく、すんなり実現するようなしくみをつくる」ことを提案。