ささいな社内規定違反で解雇も、監視強める企業SAM KELLY/WSJ, ISTOCK (5)

 子どもの宿題のために会社のプリンターを使ったり、ズームの全体ビデオ会議中にフェイスブックで「マーケットプレイス」を閲覧したりしたことはないだろうか。警告しておこう。雇用主はあなたの行動を厳しく監視しているかもしれない。

 大手企業は効率性を追求し、社員特典の悪用に目を光らせている。一見ささいな違反行為であっても、会社の規則に照らせば解雇につながる可能性がある。

「新たな管理方法の要請が多数寄せられている」。企業のクレジットカード口座を管理し、不正利用を監視するペイホークの米国担当ディレクター、ケイティー・マキロップ氏はそう話す。

 顧客企業はペイホークに対し、法人カードを使用できる時間と場所を制限するよう求めている。例えば、ある企業は昼食手当としてのカード利用について、平日の午前11時から午後2時に限定し、メキシコ料理チェーンの「チポトレ」では使えるが、スーパーマーケットの「クローガー」では使用不可としている。ペイホークはクレジットカード大手のビザとマスターカードとの提携を通じて、従業員の支出をリアルタイムで企業の財務チームに通知し、疑わしい取引を即座にブロックできる機能を開発中だ。

 ペイホークは会社の方針に違反した従業員がどうなったかは追跡調査していないが、マキロップ氏は、雇用主が行動規範をより真剣に受け止めていることは間違いないと述べている。

 企業の厳しい対応が複数報告されている背景には、そうした事情がある。例えば、フェイスブックやインスタグラムを運営するメタ・プラットフォームズは、25ドル(約3800円)の食事手当を他の品目に使用した従業員を解雇した。また、会計監査大手アーンスト・アンド・ヤングは複数のトレーニング用動画を同時に視聴した従業員を解雇し、小売り大手ターゲットは一般客より先に人気のスタンレーのウォーターボトルを購入した従業員を辞めさせた。各社はこれらの件に関してコメントを控えた。

 企業と従業員の力関係が企業側に有利に傾く中、一部の企業は厳格なルール適用を通じて社内規定違反者を見せしめにしたり、人員削減は行わずに給与を減らしたりしている。新型コロナウイルス禍後の大量採用を後悔する企業は、就業規則を使って不要な従業員を追い出すことができると、人事コンサルタントのスザンヌ・ルーカス氏は語る。

 従業員は、会社の特典の多くは生産性向上を目的に設けられていると主張する。無料の食事はデスクにとどまるためのインセンティブだ。事前録画された人事関連の動画は、対面でのセクハラ研修の気まずさから解放されるというより、2台目のモニターで動画に注意を半分払いながら仕事を続けるよう促すものだ。

 なぜ単に人員削減を発表するのではなく、従業員を解雇する口実を作るのか。ルーカス氏は複数の理由を挙げる。