自分は正しいと言い張るのが私の癖だ。その癖に、グレースはしょっちゅうイライラすると言っていた。
「私の妻だって喜ばないよ」とジョゼフは笑みを浮かべて言った。
「そのことを心にとどめて、どんな質問が本当に効果があるか、もう少し深く考えてみよう。質問がコミュニケーションに不可欠な要素だということはわかっているね。だけど、思考における質問の役割はあまり知られていない。だからこそ、クエスチョン・シンキングのスキルが非常に貴重なんだよ。
きみが質問のもつ真のパワーをしっかり身につける気があるなら、質問で人生すべてを変えることができる。
それには、自分自身やまわりの人への質問の数を増やし、質を高めることが大切なんだ。さらに、質問をする際にはその意図がどこにあるかも非常に重要だ。ルーマニアの劇作家、ウジェーヌ・イヨネスコの有名な言葉がある。『人を正しい道に導くのは答ではなく、質問だ』」
質問を変えれば行動が変わる?
クエスチョン・シンキングとは
私の顔に戸惑いが見えたのだろう。ジョゼフは少し間をおいて、こう言った。
「これまでクエスチョン・シンキングという言葉を聞いたことがないんだね?」
たしかに聞いたことがない。私は首を振って応えた。
「クエスチョン・シンキングというのは、質問を使った思考スキルの体系でね。さまざまな状況への取り組み方の幅を広げてくれるものだ。
このスキルを使えば、きみの行動が途方もなくよい結果をもたらすように、後ろ向きな質問を前向きな質問へと変えることができる。
まずは自分に問いかけることから始める。そして、他者に質問を向ける。
クエスチョン・シンキングは文字どおり思考に作用するんだ。ピントのぴったり合った創造的で効果的な作用を思考にもたらす。