つまりクエスチョン・シンキングとは、賢明な選択のための土台をつくるとても優れた方法なんだよ」
クエスチョン・シンキングとは、他者への質問や自分自身への質問を巧みに駆使することで、思考、行動、結果を一変させるための体系的なツールである。
「続けてください」
疑いつつも、私はそう言った。
「たいてい、われわれはほとんど意識することなく質問をしている。自分自身への質問ならなおさらだ。質問とは、われわれの思考過程の一部なんだ。実際に思考は、頭のなかの質問と答の過程として起こっている。それだけでなく、われわれはなんらかの行動を起こし、なにかを実行する際に自分自身の質問に答えている場合も少なくない。
ひとつ例をあげよう。今朝服を着替えるとき、きみはクローゼットに行き、きっとこんな質問を自分に投げかけただろう。
『今日出かける場所は?』
『今日の天気は?』
『着心地がいいのは?』
『洗濯してあるものは?』
きみは瞬時に決断し、なんらかの行動を起こすことで、その質問に答えた。つまり服を選び、それを着た。きみは自分が出した答を身につけているんだ」
「まあ、たしかにそうでしょうけど。でも、私がそういう質問をしていたとしても、そんなことほとんど気に留めていませんよ。実際、私の最大の質問は、グレースが約束どおりに、クリーニング店から私のスーツを取ってきてくれたかということでした」
2人とも笑いだした。ジョゼフはだんだん調子を上げていった。私は椅子に深く掛け、彼の話をしっかりと聞くことにした。私もだんだん興味が湧いてきた。
問題への質問を変えるだけで
人類の歴史は変わってしまった
「人が行きづまったとき、答や解決案をさがすのは当然のことだ。しかしそうすることによって、問題の糸口を見つけるどころか、解決への道を塞いでしまうこともある。
アルバート・アインシュタインの素晴らしい言葉をつねに覚えておこう。
『問題を生み出したときと同じ考え方をしていては、問題を解決することなどできない』
問題を解決するのにまず必要なのは、質問を変えること。
そうしなければ、われわれは過去の役立たずな答を何度も何度も使いまわすことになる。