パワハラと判断されれば、企業は対策を講じる必要がある
カタリーナ「誤解のないように言っておくと、営業ノルマは売り上げや成約件数の目標だから、ノルマがあること自体が問題というわけじゃない。大事なことはその内容と対応ね。ノルマ未達成を理由に、罰金控除や商品買取り等の強要があれば、労働基準法違反と考えられるわ」
藤枝「以前から営業ノルマはありましたが、前支店長のときは今のように過剰なノルマではありませんでした。まして、自腹を切れなんて言われたこともありません」
カタリーナ「組織ぐるみで自爆営業を強要してくることもあるようだけれど、あなたの場合、問題は今の支店長のようね。心身にこれ以上の支障を来たす前に、本社の相談窓口に通報してみたらどうかしら」
藤枝「そうしてみます」
カタリーナ「事情を説明して、人事異動を申し出てみることも検討したいわね。とにかく一人で抱え込んじゃダメよ」
藤枝「はい。すぐに相談できてよかったです。うちは社内公募制度があるので、何とかなるかもしれません」
●いわゆる「自爆営業」については、(1)優越的な関係を背景とした言動、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、(3)労働者の就業環境が害されるものという3要素を満たす場合は、パワーハラスメントに該当する可能性があることに鑑み、使用者及び労働者にその旨を周知する観点から、パワハラ防止指針に明記される方向で早期の改正が見込まれている。自爆営業が直ちにパワハラとなるわけではないが、パワハラと判断されれば、企業は雇用管理上必要な措置を講じる義務が生じる。
●自爆営業による自社商品の購入代金を労使協定なく給与から天引きした場合は、労働基準法違反となる。商品の購入等に応じなかったことを理由に懲戒処分にした場合は、懲戒権の乱用で無効となる可能性もある。
※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。
(社会保険労務士 佐佐木由美子)