自爆営業で自己破産、横領に手を染めたケースも

藤枝「そうなんですね。しかし、部品代金や保険料を肩代わりするとなると……いくら売るためだからといって、とても自腹で払える額ではありませんよ」

カタリーナ「昔、あなたと同じように大手車販売店の営業社員で、値引きや部品代金、ガソリン代、保険料などを自己負担する形で過重なノルマを達成した人がいたわ。そのうち借金までして自爆営業をするようになって、借金返済のために代金横領に手を染め、最終的に自己破産したケースもあるのよ」

カタリーナ

藤枝「なんだか他人事には思えません……」

カタリーナ「使用者としての立場を利用して、社員に不要な商品の購入を強要することは、不法行為になる可能性があり、パワハラの可能性大ね。公序良俗に反した場合、売買行為が無効となる可能性もある。きっぱりと拒否するべきよ」

藤枝「そうですね、とても勇気が要りますが」

カタリーナ「もし自爆営業が発覚して問題になったとしても、そんな上司は決して責任を取ってくれないわ。むしろ、あなた自身の判断で勝手にやったことだと言うはずよ」

藤枝「そんな……」

カタリーナ「今後も自爆営業を迫ってくるようなら、そのときの会話を録音して証拠を残しておいた方がいいわね」

藤枝「わかりました。そうします」

カタリーナ「自爆営業が民法上の不法行為や公序良俗違反となる場合であっても立証が困難であることや法律上の規制が明確でないことから、実態として放置されていることが多いの。そこで厚労省は、自爆営業が『優越的な関係を背景とした言動』など3要素を満たす場合はパワハラに該当することもあるとして、パワハラ防止指針に明記する方向性を示しているわ」

藤枝「そうなんですか、知りませんでした」