今月のノルマにまったく届かないじゃないか。やる気あるの?

荒井「藤枝君、ちょっといいかな?」

藤枝「はい、何でしょうか」

荒井「藤枝君の営業成績、ひどすぎるな。この分だと今月のノルマにまったく届かないじゃないか。いったいどうするつもりなの?やる気あるの?」

藤枝「は、はい、もちろんです」

荒井「私が若い頃は、車を売るための『サービス』として、商品の値引きやガソリン代を始め、部品代金や保険料まで自腹をきって売ったものだよ。お客さんは、そういうサービスに弱いからね」

藤枝「それって……僕にも同じことをやれということですか?」

荒井「昔から『損して得取れ』って言うだろ?お客さんだって喜んでくれるし、営業成績が上がれば評価も上がってボーナスだって増える。ノルマも達成できるし、悪い話じゃないだろう?」

藤枝「……」

 荒井は悪びれる様子もなく、むしろ自分のやり方を武勇伝のように語り、部下を鼓舞しているつもりでいるようだった。「自腹だなんて、納得いかない」そう思った藤枝は、社労士のカタリーナに相談することにした。

従業員が自己負担で商品を購入する「自爆営業」

カタリーナ「こんにちは!社労士のカタリーナです。今日はどんなご相談かしら?」

藤枝「聞いてください。僕の営業成績が悪いからって、上司がとんでもないことを言い出して……」

藤枝は、その日の出来事をカタリーナに説明した。

カタリーナ「まぁ、とんでもない上司ね。それって『自爆営業』しろと言っているも同然だわ」

藤枝「自爆営業って、何ですか?」

カタリーナ「自爆営業というのは、使用者が社員に対して不要な商品の購入を強要したり、ノルマを達成できない場合に自腹で契約を結ばせたりすることよ。コンビニで売れ残ったクリスマスケーキを買わされたりする、みたいな話は昔からよく聞くけれど、最近また問題になっているの」