千葉大学卒業の感じの良い女性が
アルバイトではもったいない
荒木さん(仮名)は千葉大学を卒業したばかりの感じの良い女性だった。山形県の酒田市出身で辛党だったこともあり、私とのあいだでは、ワイン、ビール、日本酒の話題に事欠かなかった。
千葉大学を卒業してアルバイトであるキャストをしているのはもったいないとここでも余計なおせっかいと思いつつも就活するよう何度か話した。彼女は、自分が人生を懸けてやるべき仕事が見つからない、と言っていた。
私も就職活動のとき、この仕事がしたいなどという強い思いはなかった。なんとなくついた仕事だったが、その中にやりがいや醍醐味を見つけ出した。そんな経験談を伝えた。
直々に就職の知らせをしてくれた内野君や浜田君とは対照的に、荒木さんはあいさつすることもなく急に辞めていった。その後、どうなったのかはわからない。彼女のように、辞めることを告げぬまま、いつの間にかいなくなるケースも多かった。
たくさんの同僚と一緒に働いた。たくさんの同僚が辞めていった。彼ら彼女らの就職・転職先は、私が知っているだけでも、外車のディーラー、携帯電話ショップ、介護施設の職員、ホテルのフロント係、住宅販売の会社などさまざまだった。
彼らの中には、再びキャストに戻ってくるケースもあった。キャストはアルバイトで決して収入は多くない。それでもゲストにハピネスを提供するこの仕事が、自分のつらかった経験や傷ついた心を癒してくれるのかもしれない。
あれからもうずいぶんと経った。一緒に働き、社会に巣立っていったみんなは今、どこでどんな人生を送っているのだろうか?
『9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方』(福島文二郎著、中経出版)
キャストになってしばらくのあいだ、私の休みは水曜と木曜だったので、土日キャストの大学生や専門学校生とも一緒に働いた。就活や将来の進路 などの話もできて、若い人と働くのは楽しかった。その後、私は土日を休みにしたので「土日っこ」と会う回数は減った。
春休み・夏休み、年末年始などの繁忙期には「土日っこ」も原則的にシフトが組まれていた。
「ディズニー・ユニバーシティ・プログラム」という研修プログラムの講師役で、アルバイトのキャストが講師となって教えるのが特徴。年1回の募集があり、20名程度が任命される。キャストを代表する存在であるためか応募者も多く、なかなか高い倍率になっているようだ。