2024年3月期に過去最大の最終赤字に沈んだ住友化学が事業構造改革を加速させている。サウジアラビアの大型石油化学事業「ペトロ・ラービグ」や医薬品事業の拡大を目指す、故米倉弘昌元社長の路線を修正し、事業の中心を農薬と半導体材料にシフトする。さらに、ラービグの再建策や医薬品子会社、住友ファーマの切り離し方針など大型のリストラも相次ぎ打ち出している。特集『化学サバイバル!』の#6では、ラービグのリストラの舞台裏を明かすほか、次なる大型のリストラ候補も予想する。巨額赤字からのV字回復を目指す住友化学の次の一手とは。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
「住友化学は撤退戦が下手」と岩田社長
医薬品とサウジの次の大型リストラは?
「撤退にもいろいろな種類はあるが、住友化学は事業をやめるのが下手な会社。とことん最後までやってしまう。しかし、これからはそれではいけない。たとえ収益が出ていても、その事業にとって住友化学がベストオーナーであるかという観点で進めていく」
サウジアラビアの巨大石油化学事業ペトロ・ラービグの債権放棄と15%までの出資比率引き下げというリストラを実行した住友化学の岩田圭一社長は12月上旬のダイヤモンド編集部のインタビューにそう強調。事業構造の転換に向けたリストラの手綱を緩めない方針を示した。
岩田社長は2024年3月期に過去最大の赤字に陥った主因である医薬品子会社、住友ファーマについて「ベストオーナー選択」と切り離す方針を明確にしている。ラービグと住友ファーマは、岩田氏の3代前の社長を務めた故米倉弘昌氏が住友化学の屋台骨となる事業として、力を入れてきた。
中でも05年にサウジアラビア国有石油会社のサウジアラムコとの合弁で発足したラービグは、石油化学ビジネスのゲームチェンジャーを目指した巨大プロジェクトだ。だが、総工費2兆円を投じた巨大事業はトラブルなどにも見舞われ、石油化学市況が悪化した近年は住友化学にとって“問題児”となっていた。今回、約20年にわたり取り組んできた大型案件の見直しに踏み込んだ。
事業ポートフォリオの見直しも進めている。リストラするサウジと医薬品事業に代わり、農薬と半導体材料を事業の中心に据える。両者で30年に1000億円ずつのコア営業利益を稼ぎ出す計画だ。12月4日には同社は事業方針説明会を開いたが、メインは農業と半導体材料。化学品事業の説明はなかった。
巨額赤字からのV字回復を目指す同社にとって、最も大きな成果といえるのが、ラービグのリストラである。なぜラービグは早期決着を図ることができたのか。次ページでは、住友化学がアラムコから再建策の同意を取り付けることができた真相を明らかにする。一方、大型石油化学事業のリストラはまだ第一幕にすぎないとの見方もある。次なるリストラ候補も明らかにする。