カーオブザイヤーに「売れ筋でない車」が選ばれた理由、選考委員を経験した筆者が考える“賞の意義”とは日本カー・オブ・ザ・イヤーで最優秀車に選ばれたホンダのミニバン「フリード」 Photo:JIJI

3つのカーオブザイヤーに
トヨタ・スズキ・ホンダ

 12月5日、日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)が運営する「2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー」にホンダの小型ミニバン「フリード」が選出された。ホンダ車がCOTY日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するのは14年ぶりとなる。

「5ナンバーサイズのミニバンで3列シート。居住性、使い勝手の良さに磨きをかけるとともに、動的質感の向上、ひいては操縦の喜びを加味することに成功した。ガソリンエンジンモデルに加え、ホンダ独自のハイブリッド『e:HEV』を加えたことも魅力。ホンダのM・M(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想を見事現代に体現した」。受賞理由には、そのような評価が挙げられている。

 一方、先んじて11月に発表されていたのが、日本自動車殿堂(JAHFA)による「2024~2025日本自動車殿堂カーオブザイヤー」だ。こちらを受賞したのは、トヨタ自動車の「クラウン(セダン)」。

 受賞理由として、「上級セダンの新しいイメージ創造に挑戦し、HEV(ハイブリッド車)は『2.5Lマルチステージハイブリッドシステム』を搭載、クラウン初となるFCEV(燃料電池車)を含む多様なパワートレーンで環境に対応。パーソナルとビジネスユースを高い次元で両立させた」などが挙げられた。

 さらに、日本自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)の「2025年次RJCカーオブザイヤー」(国産車部門)は、スズキのコンパクト・ハッチバックの「スイフト」が受賞した。

「スタイリッシュなデザイン性やスポーティな走行性能をブラッシュアップ。新開発のパワートレーンにマイルドハイブリッドも搭載してクラストップの空力性能、軽量高剛性ボディなどで車本来の基本性能を高めた上で、最新の運転支援システムを採用したことを評価した」という評価が受賞理由として挙げられた。

 こうして、今年の「カーオブザイヤー」は、“三車三様”となりトヨタ・スズキ・ホンダが分け合うものとなった。面白いのは、現況の国内新車市場はトヨタ一強で、2位スズキと3位ホンダがそれを追うという構図の中、その3社の新型車がそれぞれ異なるカーオブザイヤーを受賞したことだ(24年度上期国内総市場メーカー別ランキングでは、スズキとホンダが2位争いで拮抗、これまでスズキに次いでいたダイハツ工業は大規模な不祥事によって大幅販売減の状況にある)。

 なぜ、今年のカーオブザイヤーがトヨタ・スズキ・ホンダに三分されることになったのか。