三菱UFJと三井住友がトヨタ経済圏の「融資シェア」を争奪!三菱UFJの次の一手、新出向ポストが帯びる「特命」とはPhoto:Bloomberg/gettyimages

約45万社から成る巨大なサプライチェーンを構築しているトヨタ自動車。そのトヨタ経済圏で日々発生している金融ニーズを取り込むべく、3メガバンクはしのぎを削っている。その争奪戦において2024年4月、トヨタ自動車本体のメインバンクである三菱UFJ銀行は新たな一手を繰り出した。特集『新・銀行サバイバル メガバンク 地銀 信金・信組』の#1では、その内容と背景、課されているとされる“特命”に迫った。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

三菱UFJ銀行vs三井住友銀行
トヨタ経済圏争奪戦の行方

 愛知県を中心に構築された、トヨタ自動車を支える巨大なサプライチェーン。トヨタから直接発注を受ける1次下請け(ティア1)から2次、3次と連なるピラミッド構造になっており、そこに組み込まれた企業数は実に45万社にも上る。

 そのサプライチェーンは、メガバンクにとって宝の山に映るはずだ。設備投資のための資金需要に始まり、下請け企業の従業員に対する個人向けの金融サービスまで、45万社の「トヨタ経済圏」から生まれる金融取引需要の大きさは計り知れない。

 故にメガバンク、中でも三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、少しでもトヨタ経済圏へ食い込もうと、この数年熾烈な争いを繰り広げている。

 下表は愛知県企業のメインバンクシェアだ。三菱UFJ銀行はシェア19.90%を握り、1.82%の三井住友銀行を圧倒している。だが両行の差は、数字ほど大きくは開いていないとみるべきだろう。両行は競い合って、トヨタ向けにさまざまな施策を実行しているのだ。

 三菱UFJ銀行が2020年9月に立ち上げたのが「サプライヤープロジェクト」だ。部品メーカー約200社の戦略を、本部と支店が連携しながら支える。製造業の代表的存在でもあるトヨタとトップバンクが組んだとあって、業界内外から大きな注目を集めた。

 三井住友銀行も負けていない。新型コロナウイルスの感染拡大で日本中が大混乱に陥る中で、日本自動車工業会がトヨタ主導で打ち出したサプライヤーの融資支援策「助け合いプログラム」では、“ハブ”として先頭に立ってトヨタを支えた。

 加えて三井住友銀行は、役員クラスの派遣にも積極的だ。同行の福留朗裕頭取は、頭取に就任する2年前までトヨタで販売金融事業本部本部長を務めていた。

 まさしく“あの手この手”だが、三菱UFJ銀行がトヨタ経済圏争奪戦を有利に進めるべく、24年4月に新たな一手を打っていたことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。トヨタ内のある部署に、銀行として初めての出向ポストを獲得していたのだ。“特命”を帯びたそのポストとは?次ページで明らかにする。