AI半導体 エヌビディアvsトヨタ 頂上決戦#9Photo:AFP=JIJI

AI(人工知能)半導体市場の拡大を見据え、最先端「2ナノ」世代の半導体の国産化を目指すラピダスが、2027年の量産化に向けて、初めての資金調達を画策していることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。すでに、トヨタ自動車や三菱UFJ銀行などに協力を要請している。特集『AI半導体 エヌビディアvsトヨタ 頂上決戦』の#9では、水面下で調整が進むラピダスの資金調達スキームの全容を明かす。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

ラピダス支援「累計9200億円」の追加必須
水面下で進む“初の資金調達”明らかに

 2027年に最先端2ナノ(ナノは10億分の1)メートル半導体の量産を目指すラピダス。それに向けて小池淳義社長は総額5兆円の資金が必要だと試算している。内訳は「研究開発や試作に2兆円、量産化に3兆円」というものだ。

 トヨタ自動車やソフトバンクなど8社から出資を受けているが、その金額はわずか73億円にとどまる。金融機関からの融資実績はなく、運営資金の全ては政府が支援してきた。

 これまでの政府支援は累計9200億円。この資金でラピダスは、23年9月から北海道千歳市に半導体工場の建設を開始しており、25年4月に試作ラインの稼働を始める計画だ。今後は、27年の量産に向けた準備が始まる見通しで、追加の資金確保は必須となっている。

 一方で政府は、これまで通りの枠組みでラピダスに巨額資金を投下し続けるのは難しくなってきた。

 このため経済産業省は、ラピダスの支援手段を多様化する検討に入った。民間金融機関の融資に政府保証を付ける案を軸に、新法の整備を進めており、早ければ秋の臨時国会で提出する。

 こうした中、ダイヤモンド編集部の取材で、ラピダスが自らの資金調達に向けて、関係各所に構想を打診したことが分かった。

 次ページでは、従来の手法で政府のラピダス支援を継続するのが難しくなっている「二つの理由」を解き明かすとともに、ラピダスが初めて乗り出した「資金調達のスキーム」の全容に迫る。