ハラスメントの対応は
「うまく対処」の前例が当てはまらない?

 中立に聞こうとしても、組織にとって不都合な情報を持ち込む人と、組織にとって都合の良い情報を話す人がいると、どうしても後者に重きを置いてしまう。

 また、「あの人はハラスメントに厳しく対処するはず。なぜなら以前、他の事案にうまく対処していたから」といった思い込みは危険である。ハラスメントの当事者が誰かによって、その対応が変わる可能性があるからだ。

 わかりやすく言えば、その人と懇意な人がハラスメントをした当事者だと言われていた場合にどうなるか、という話だ。前例はあてにならない。

 だからこそ、組織内での個々の属人性を超えた対応を構築していくことが必要なのであり、第三者委員会の調査はそれに当たる。しかしフジテレビは今のところ、外部の弁護士による調査を行うと言いながら、それは日本弁護士連合会(日弁連)のガイドラインに基づく第三者委員会ではないのだそうだ。それで十分な調査ができるのだろうか、という声が出るのはやむを得ない。

・「和気あいあい」で居心地が良いのは「一部の人」だけである可能性

 社内がギスギスしておらず、和気あいあいとしたムードがあるのは悪いことではないし、意思疎通のために必要だ。しかし和気あいあいとした空気だから、その空気を乱さないために組織内の問題を言い出しづらいこともある。

 少し前にフジテレビで、2024年入社の新人男性アナウンサーに対する扱いが「いじり」を超えた「いじめ」ではないかと炎上したことがあった。中継先にいたこのアナウンサーの容姿や年齢について、スタジオにいる先輩アナウンサーたちがからかう場面があったのだ。先輩アナたちは「ポップなデザインが似合わないねえ」「2001年(生まれ)? 信じられない」などと笑いながら発言した。