会見で厳しい表情を見せるフジテレビの港浩一社長会見で厳しい表情を見せるフジテレビの港浩一社長=1月27日午後5時22分、東京都港区(安元雄太撮影) Photo:SANKEI

“やり直し会見”でもメディアの怒りは収まらなかった――。出席メディアを限定し映像撮影も許さなかった“自滅会見”から10日後。トップ2人の引責辞任という切り札を切って臨んだ27日の会見だった。23日には独立性の高い第三者委員会による調査も立ち上げ済み。フジテレビ側は今度こそ、事態は鎮静化に向かうものと期待していたはずだ。しかし、思惑は外れた。会見は、経営陣を糾弾する怒号が飛び交う、混沌とした“吊し上げ”の場となった。さらに、経営に強い影響力を持つとされる日枝久取締役相談役の不在もやり玉に。“無条件降伏” ともいえる低姿勢で臨んだ会見が、メディアから手痛い拒絶を受けたのはなぜか? “不祥事企業No.1”三菱自動車の広報部で危機管理を担当した広報コンサルタントが、フジテレビの信頼回復への道を改めて探る。(広報コンサルタント 風間 武)

SNSで「放送事故?」と
揶揄された“やり直し会見”

 191メディア、473人が参加。質問回数116回。所要時間は午後4時から日付をまたいで午前2時23分まで計10時間23分――。前代未聞のこの数字を見るだけで、今回の会見も失敗であったことが明白だろう。

 会見が長時間化するということは、一般的に、企業側の説明にメディアが納得していないということを意味する。何とか期待する答えを引き出そうと、言い方を変えただけの質問が記者を変えて繰り返されるため、時間がどんどん膨らむ訳だ。

 さらに、企業側の守りが堅いと見ると、恫喝的な口調で脅しつつ、役員の失言、いわゆる“ポロリ”を誘導質問で引き出そうとするメディアが現れる。企業側の意識の低さを記者の持論で非難する演説型の質問も増え、会見は収拾がつかないカオスな状況に陥る。

 フジテレビの二度目の会見は、こうした典型的な失敗例となってしまった。

 国内のあらゆるメディアが実況中継する中、SNSのX(旧ツイッター)でも会見絡みのトレンドワードが上位を占めた。混沌とした“吊し上げ”状態となり言葉に詰まる役員らの姿を見て、「まるで放送事故!」「また失敗」「視聴率爆上げ」などと揶揄する投稿が中心だったのは言うまでもない。

 一部メディアの乱暴な口調での質問や怒号、野次へ反感の声も多く上がり、「トイレ休憩とらせてあげて!」「体力限界では?」などと役員への同情も寄せられた。しかし、全体として、好意的な評価はほとんど見かけなかった。