危機管理広報の基本が欠落
炎上する社内調査への疑惑
積み残しのもう一つが、中居氏のトラブルへのフジテレビ社員の関与を中心とした内部調査の状況や会社の対応経緯についての説明だった。
今回会見でフジテレビは、緊急会見の“作法”に完璧に則った体制に転じた。
前回と打って変わって完全にオープンとし、終了時間も含め一切の制限を設けなかった。巨大な赤富士の絵画が悪目立ちした手狭な会議室から落ち着いた色調の広い会議室となり、白いテーブルクロス、役員のネクタイは濃紺?に統一と、まるでPR会社が設営を担当したかのような見事さだった。
しかし、失敗を挽回しようという、そんな意気込みが現場では空回りした。メディアが期待したほどには、トラブルの詳細に踏み込まなかったからだ。
週刊文春の報道を裏付けるような説明がなされるはず、あるいはなされるべき、という先入観が裏切られた一部メディアが“暴走”し、会見全体を混乱させた。女性のプライバシー保護を盾にしてフジテレビ側が逃げている、といつまでも引き下がらなかったのだ。
口頭説明は失敗の元、というのは危機管理広報の常識だ。
フジテレビはこれまでの社内調査の経緯や結果を短いペーパーにまとめ、席上配布するべきだった。プライバシー配慮など入念なリーガルチェックは当然だが、公表できる限りの情報を明確にして線引きし、これ以上はNGときっぱりした対応をすべきだった。
結果的にフジテレビは、会見の最大ミッションであった、これまでの社内調査に一定の納得感を獲得し、“本番”である第三者委員会調査へ橋渡しすることに失敗してしまった。
筆者が信じられない思いなのは、かつては“民放の雄”と呼ばれたメディア大手でありながら、危機管理広報の基本的イロハがごっそりと欠落していることだ。これでは、フジテレビの炎上は当面収まるまい。