第三者委員会は果たして
メディアの期待に応えられるのか?

 水を差すようではあるが、第三者委員会調査に過剰な期待は禁物だ。 万能ではない。

「日弁連のガイドラインに準拠した」と主張しても、実態は“お手盛り”というケースも少なくない。原因究明や事実調査が甘く、 親会社や役員に配慮して踏み込みが足りなかったのでは?と、疑われるような調査報告書があるのも事実だ。

 参考になるのが、ガイドライン作成に関わった弁護士らでつくる「第三者委員会調査報告書格付委員会」の格付け結果。これまで28回分が公表されているが、委員のうち一人でも5段階でA評価を付けたのはたったの2例のみ。C~F評価が中心だ。

 例えば、日韓を結ぶ高速船「クイーンビートル」の浸水を隠してJR九州の子会社のJR九州高速が3カ月以上航行を続けていた問題。 昨年11月に公表されたばかりのJR九州の調査報告書は、D評価が7人、Fが2人だった。A~C評価はゼロ。

 格付け委員会では、JR九州の完全子会社で一部門に過ぎないJR九州高速に調査が偏りグループガバナンスの問題が未解明で、「JR 九州への配慮や忖度が窺われるとして、第三者委員会の実質的な独立性を問題視する指摘も多かった」とのコメントを公表している。

“無条件降伏”にまで追い込まれたフジテレビが、同じ轍を踏まないことを祈る。“ガイドライン準拠”を隠れ蓑にしたと批判を受ける事態となれば、調査全体の信頼性にキズが付く。第三者委員会の独立性を尊重しつつも、コミュニケーションをしっかりととって頂きたい。

過去との決別が
信頼回復のカギ

 最後になるが、大きな企業不祥事において、過去との決別を社会に示すことは必要不可欠だ。

 三菱自動車の二度目のリコール隠し問題を覚えておられるだろうか。2002年に起きた三菱自動車製トラクターからのタイヤ脱輪による母子3人の死傷事故が発端だった。本件をモデルにした池井戸潤氏の小説『空飛ぶタイヤ』やその映画で知られている。

 2005年3月に社内調査の最終報告書を国土交通省に提出し、ようやく幕引きを図ることとなったが、この時合わせて公表したのが、旧経営陣に対し退職金の返還を求める民事訴訟の提起だった。十分なコンプライアンス体制の構築を怠ったというのが理由で、会見場でメディアから驚きと評価の声が上がったのを覚えている。

「経営者として大変つらい決断だが。過去と決別するためにあえて先輩の責任を問うこととした」と会見で語った益子修社長(当時)の主導で、信頼回復がようやくスタートすることになった。「報道で失った信頼は報道で取り返す」とよく話していた。

 20年も前の昔話ではあるが、筆者が危機管理広報のアドバイスをする際には必ず紹介するエピソードだ。

 フジテレビは現在、メディアや世論、ステークホルダーの疑念を晴らすことができず、企業としての“信用崩壊”が調査公表まで継続しそうな厳しい事態に追い込まれている。スポンサー企業もCM復活の判断がつかない状況に違いない。

 一日も早く信頼回復の入り口に立つために、何を守り何を捨てるべきかをフジテレビ経営陣に再考して頂きたい。