日枝久氏Photo:SANKEI

タレントの中居正広さんと女性のトラブルにフジテレビ社員が関与したとの報道で、フジメディアホールディングスが揺れている。今から約10年前の「週刊ダイヤモンド」2015年11月14日号では、「誰がテレビを殺すのか」と題した特集の中で、15年中間期に初の営業赤字に転落し、「独り負け」の道をその後たどることになる王者フジテレビの凋落ぶりをレポートしている。本稿では、フジテレビの“天皇”といわれる当時の日枝久会長を直撃した記事を再掲載。幹部人事などを巡る迷走に加え、人気ドラマのヒットメーカーで社長だった亀山千広氏がすがったものも明らかにする。(ダイヤモンド編集部)

※「週刊ダイヤモンド」2015年11月14日号の記事を再編集。肩書や数値などの情報は雑誌掲載時のもの

フジテレビの“天皇”を直撃
業績不振で亀山社長の責任は?

 東京都内の高級住宅街の一角。高い壁と監視カメラに囲まれた、ひときわ目立つ大邸宅の主は、フジテレビ内部で“天皇”と称される日枝久会長、その人だ。

 その前日に下方修正された2015年4~9月期決算の発表日の夜。本誌記者は、いわゆる「夜回り」と呼ばれる取材のため、日枝会長の帰宅を待っていた。よくあることではあるが、企業の広報部を通した正攻法の取材依頼が断られたからだ。

 トップ人事は、企業の行方を左右する。業績を好転できない亀山千広社長の責任、ひいては日枝会長は自らの任命責任について、どう考えているのか。

 午後8時すぎ。車のルームライトに顔を照らされた日枝会長を乗せたハイヤーが現れ、表玄関に停車しようとした瞬間、走り寄る記者の姿に気付いたのか、日枝会長を乗せたまま車は再び加速し、自宅から遠ざかっていった。

 あっけにとられたまま、数分後に裏口の方に回ると、今度は遠目にこちらの様子をうかがう二つの人影。ところが、目が合ったと思うと人影は素早く死角へと身を翻してしまった。

 取材失敗を覚悟しながら、さらに待つこと約20分。再び同じハイヤーが走り去った方向から近づき、“待ち人”が姿を現した。

「広報を通してよ。1人に(アポなし)取材を許したら、皆に対応しなくちゃならなくなるから」

 そう言って、自宅の中に入ろうとする日枝会長に、亀山社長の経営責任に対する考えを投げ掛けた。