あの園からくる子は
荒れている
地方のある認可保育園では、0歳児の保育室に、ひらがなとアルファベット表を貼っている。1歳から机と椅子に座らせ、鉛筆を持たせている。2~3歳からは楽器を使って合奏の訓練が始まる。皆についていけず楽器がうまく演奏できない園児に対して保育士は「下手な子は音を出さないで!」と指導しているが、それを知らない親から人気のある保育園だという。園児数が200人規模のマンモス園で、1人ひとりに目が行き届かない。
その保育園を卒園した子どもたちが入学する小学校では「あの園からくる子は荒れている」で有名。
未就学児のうちに「あきらめること」を覚えた1年生の児童のやる気を起こさせるのに教員らが苦心していると地元ではもっぱらの評判だ。一方で、大人から言われた通りに“勉強”してきた子は、小学校入学時に、ひらがなや算数を覚えてしまっているため授業がつまらない。早期教育が教員を疲弊させる原因の1つにもなっている。
東京23区内にある保育園の園長は、近隣の公立小学校と交流するなかで教員が疲弊し、教育指導が画一化していく様子を見て、こう感じている。
「私たちは保育園で『主体的に活動できるように』と子どもたちを育てています。ところが、卒園して小学校に入ると、右に倣えというのが小学校かと思うくらい、子どもたちが均一化されていくのです。自分の気持ちを伝える、やりたいことを見つけて夢中になる。そういう主体性のある子どもたちに育てても、小学校で潰されてしまう」
「主体性」があるはずなのに
「自由人」と呼ばれるように
その保育園でADHD(注意欠如・多動症)の可能性があって検査を受けると結果が曖昧だった子どもがいたが、主体性を大事にする保育園のなかで落ち着いて過ごしていた。臨床心理士も「普通級に進学するので大丈夫」と言っていたのにもかかわらず、小学校に入学した4月に「通級に行ってください」と学校側から言われた。