それに伴い主要住宅価格指数が再加速するならば、CPI家賃の伸び率も下げ渋る恐れがあるだろう。
また、家賃を除くコアサービス価格についても前年比+4.5%と高止まり傾向にある。家賃を除くコアサービス価格の伸び率に先行する傾向が見られる、長期のインフレ期待は高止まりしている。
例えば、ミシガン大学が公表する消費者の5年先のインフレ予想は、コロナ禍前の5年間は平均で2.5%だったのに対し、2024年9月時点では3.1%と上回っている。
インフレ率の「アンカー」の役割を果たすインフレ期待が高止まり傾向にあることが、実際のインフレ率を下がりにくくしているとみられる。
最大のトランプ・リスク
インフレ再加速の懸念も
トランプ氏の政策で最大のリスクは、インフレ再加速である。具体的には、「(1)厳格な移民規制」と「(2)追加関税措置」の2つがインフレにつながり得る政策として特に懸念される。
トランプ前政権時には不法移民の取り締まりの強化やメキシコとの間の国境の壁の建設、ビザ発給数の抑制といった移民抑制策を進めてきたが、バイデン政権では、ビザ発給の正常化や国境の壁の建設停止を推し進めるなど移民の受け入れを積極化させ、移民の増加は、コロナショックからの回復過程において急増した労働需要を穴埋めしてきた。
その結果、労働需給の緩和に伴う賃金上昇圧力、ひいてはインフレ率の低下に寄与してきたと考えられる。
バイデン政権はすでに不法移民規制を厳格化しているが、トランプ氏がより厳格に移民規制を実施することになれば、労働供給が大幅に抑制され、賃金上昇圧力やインフレ圧力が高まる可能性がある。
追加関税コストは
米国の企業と消費者が負う
トランプ前政権時には、中国からの輸入品に対する最大25%の追加関税措置が実施された。1月20日に発足したトランプ新政権は、こうした既存の措置に比べてさらに厳格な措置を取ることを示唆している。
具体的には、「(A)中国からの輸入品に対して一律60%の関税を課す」ことに加え、「(B)その他の国・地域からの輸入品に対して一律10%以上の関税を課す」と述べており(編集部注:就任早々、今年2月1日からカナダ・メキシコへの25%関税および中国への10%関税を発表した)、保護主義政策を一層強化する見通しだ。