![ふるまいよしこ「マスコミでは読めない中国事情」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/c/a/650/img_caad7bede20c03337713dab091650d7c226274.jpg)
1月に米国で成立した「TikTok禁止法」。1月19日からTikTokが使えなくなると聞いた米国の熱心なユーザーたちは、同じく縦型ショート動画を投稿でき、中国版Instagramと呼ばれる「小紅書(RED)」に大量に流入した。中国のネットユーザーがこの「TikTok難民」を迎え入れたことにより、小紅書である種の“中米民間文化交流”が始まった。トランプ氏が大統領に就任してTikTok禁止は撤回されそうな見込みだが、今後、この文化交流は果たしてどうなる?(フリーランスライター ふるまいよしこ)
米国でTikTokが禁止され、大勢のユーザーが中国版Instagramに流れ込んだ
バイデン前大統領が署名して成立した「TikTok禁止法」。1月19日から米国でTikTokの運営が中止になるというので、1月上旬、中国版Instagramと呼ばれる「小紅書(RED)」に米国人TikTokユーザーが大量になだれ込んだ。
久しぶりに小紅書を開いてみると、確かにタイムラインは英語で溢れていた。スクロールしてもスクロールしても、英語話者たちの書き込みが延々と続いていた。
小紅書は今、中国国内でもっとも人気のSNSアプリといえる。「小紅書中毒」を自称するくらいどっぷりハマっているユーザーもたくさんおり、そういった人々にとって、タイムラインに突然現れた英語の投稿の波は間違いなく「異常事態」だったことだろう。
そもそも、なぜ米国でTikTokが禁止されたのか
背景を説明すると、TikTokは中国の「字節跳動 Bytedance」(バイトダンス)が開発した、ショート動画やライブ動画を媒介にするSNS「抖音」(ドウイン)を基礎とするサービスだ。これを利用して中国内外で、アーティストや個人事業者、スタートアップ企業が自分たちの作品や製品を宣伝し、ビジネスを展開する絶好のプラットフォームとして広く利用されるようになった。
現在、抖音のユーザーは約8億人、TikTokの世界ユーザーは2024年4月の統計で15億人を超えている。
しかし、米中関係の悪化に伴い、米国で爆発的に成長を遂げたTikTokの情報セキュリティが疑問視されるようになった。特に2023年、中国製の気球が米国本土に飛来した事件以降、国土安全保障の問題が急激に注目を集めるようになった。そして昨年、「TikTokの米国事業を中国の親会社から切り離して売却するか、米国での運営を停止するかを迫る法案に当時のバイデン大統領が署名。TikTok側は裁判所に「違憲性」を訴えて、発効期限が先延ばしになっていた。