小紅書のもう一つの特徴は、古参SNS「微博 Weibo」(ウェイボ)などに比べて、都市生活者の生活情報が中心ということもあり、ユーザーの多くが高学歴の中産階級だという点にある。つまり、大学教育を受けていたり、海外に留学・滞在した経験を持っていたり、海外旅行を経験している人たちが多く、ウェイボなどよりもずっと外国に対する知識や外国語への対応能力が高い。
小紅書で民間米中交流が始まった
小紅書になだれ込んだ「TikTok難民」側からも「わたしに中国語の名前を付けて」「〇〇は中国では何ていうの?」などという質問が投げかけられ、それに中国人ユーザーが答えるという形で対話が始まった。さらに、自分の飼っている猫の写真を見せ合ったり、食べ物を紹介したり、お互いの生活費や医療費の話題、さらには大学の奨学金の返済に苦しんでいる米国人と、「中国も大学の費用が高くて……」と共感する中国人の間で、「なーんだ、私たちは意外と同じような悩みを抱えているんだね」といった相互理解が進み、大団円に向かっていった。
やがて米国人向けに中国語を教えるアカウントも登場。どれくらいの米国人がそれを見て中国語を学ぼうとしたかは不明だが、「これから中国語を勉強する!」と宣言する者も現れた。
そんな光景を伝える中国メディアには「民間交流とはかくあるべき」と称賛する声が並び、「国と国の壁、海を超えて、米国人ネットユーザーたちはリアルな存在としての中国人と出会った」などともてはやした。そうした記事の多くは、「米国の“政客”がいくら『中国脅威論』を振り回しても、民はかならずしもそれに振り回されない」とまとめていた。中国語の「政客」とは、単純に政治家を指すのではなく、「邪な意図を持って政治を操ろうとする人」の意味だ。
中国人が、米国“難民”との間に感じていた「主従関係」
だが、筆者がそれらを眺めていて一番興味深かったのは、多くの人たち、そしてコラムでも、「これで米国人は生身の中国を理解してくれるだろうか」「これをきっかけに中国人のほとんどは善人なんだと分かってくれるだろうか」と述べていたことだ。
「これこそWorld Wide Web(WWW)だ!」と絶賛する論評もあったが、それこそ「ワールドワイドウェブ」と称するなら、「米国人が中国人を理解」だけではなく、「中国人も米国人を理解」という喜びもあっていいはずだろう。だが、今回の小紅書へのTikTok難民流入騒ぎで、「米国への理解」を論ずる論評はほぼ目にしなかった。