狙え!不動産リッチ企業#9Photo:PIXTA, South_agency/gettyimages

PBRが低く割安な傾向にあるのが、不動産含み益を多く抱える不動産リッチ企業だ。実は、不動産含み益を反映した修正PBRを算出すると、見た目のPBRよりも割安であることが分かる。特集『狙え!不動産リッチ企業』の#9では、陸運業界の44社を対象に、不動産含み益を反映した修正PBRが低い上場企業ランキングをお届けする。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

陸運業界の44社をランキング
修正PBRで分かった“格安銘柄”は?

 PBR(株価純資産倍率)は、投資の際に割安度を測る指標として用いられる。PBRが低いほど、分母の純資産に対して分子の株価が低く評価されていることを示し、一般的に割安と判断される。

 PBRが低く割安に放置されがちなのが、不動産含み益(賃貸等不動産の時価と簿価の差額)を多く抱える不動産リッチ企業だ。不動産含み益のある企業は、不動産含み益のない企業と比較してPBRやROE(自己資本利益率)が低い傾向にある(本特集#3『不動産含み益を反映した「修正PBR」が低い“割安”上場企業ランキング!2位にフジ・メディア・HD、1位は?』参照)リンク処理。

 また、不動産リッチ企業は見た目のPBR以上に割安とみるべきだろう。PBRの算出過程において、不動産含み益は反映されないからだ。足元では海外投資家の注目が賃貸等不動産に集まる中、不動産含み益を反映した修正PBRのチェックは不可欠だ。

 そこで、岡三証券の内山大輔シニアストラテジストの計算式に沿って、実効税率30%課税後の不動産含み益を反映した修正PBRを算出。本稿では、陸運業界の修正PBRが低い上場企業ランキングを作成した。

 陸運業界には鉄道などの旅客事業者や、トラック輸送を行う物流業者などが含まれる。これらの企業は大規模な設備と投資を必要とするため、駅施設や倉庫などの不動産を多く保有しているアセットヘビーな業界だ。さらに事業の集約・効率化で陸運業に用いていた土地を再開発し、商業施設などの賃貸不動産へと転換することも多く、不動産価格が上昇している昨今では“不動産リッチ業界”の代表格になっている。

 そのため、不動産含み益に着眼したアクティビストが陸運会社を狙うケースは多い。「物言う株主」として知られる、シンガポールの3Dインベストメント・パートナーズが西武ホールディングス(HD)の株式を保有しているのがその一例だ。2024年5月14日に3Dが西武HDの株式を5.01%取得したことが判明した。西武HDには約3371億円の賃貸等不動産の含み益があり、「プリンスホテル」を筆頭に数々のお宝不動産を抱えている。

 同社の中期経営計画によれば、24年12月12日に発表した「東京ガーデンテラス紀尾井町」の米投資ファンド、ブラックストーンへの売却をはじめとして、今後は保有する不動産を聖域なく流動化していく考えだ。さらに西武HDは「東京ガーデンテラス紀尾井町」の売却表明と同時に、700億円を上限に自社株買いの実施を発表。不動産の売却益の一部を株主還元へ充てる方針だ。

 西武HDの事例のように、鉄道の沿線地域外の不動産や自社だけではバリューアップが難しい物件の売却を通じて、含み益を実現化させる蓋然性は高い。そして、修正PBRを見ると、依然として割安な状態に放置されている陸運会社は多いと気付く。

 では、陸運業界の44社の中で、修正PBRが低い割安な不動産リッチ企業はどこか。次ページで一挙に公開する。