このことを提案したのは、「チームワークは、作業を分担するのと同じくらいの心理的な状態である」と主張している、スタンフォード大学のグレゴリー・ウォルトン教授とプリヤンカ・カー教授だ。
2人は2014年に発表した研究で、まず被験者35人を3人から5人の小グループに分けた。被験者たちはこの小グループ内で自己紹介をした後、1人ずつ実験室に案内された。室内では研究者からパズルを与えられ、必要なだけ時間をかけて解いてもいい(あるいは途中で諦めてもいい)と伝えられた。
被験者は、数分間パズルに取り組んだ後で、手書きのメモを渡された。そこには、パズルを解くためのヒントが書かれていた。ヒントの内容はどの被験者に対しても同じ(かつ、とても役に立つもの)だったが、1つ重要な違いがあった。メモを手渡す際に、一方の被験者群には「これは実験を行っている研究者があなた宛てに書いたものです」と伝え、もう一方の被験者群には、「これは先ほどの小グループのメンバーがあなた宛てに書いたものです」と伝えたのだ。
仲間意識の感覚を抱くことで
パズルを解く確率が高くなった
このわずかな違いが、被験者の実験に対する感想に大きな影響を与えた。研究者からヒントを与えられたと告げられた被験者は、小グループ内のメンバーとはまったく別に作業に取り組んでいると感じる傾向が強かった。「この実験ではどんなことをしましたか?」と尋ねると、「1人でパズルを解いた。同時に、他の人も同じパズルを解いていた」という回答が多く見られた。つまり、一緒にではなく、個別にパズルを解いていると感じていた。
一方、小グループ内のメンバーからヒントを与えられたと告げられた被験者は、他のメンバーとチームを組んでいるように感じる傾向が強かった。彼らは、「お互いにヒントを教え合い、その場にいないパートナーと協力してパズルを解こうとしていた」と感じていた。パズルを解いている最中にどんな気持ちだったかを尋ねると、「他のメンバーに迷惑をかけないように、頑張ってパズルを解かなければという義務感を覚えた」という回答が多く見られた。