味の素、アサヒグループホールディングス(アサヒGHD)、日本ハムにおける売上債権回転期間は44~58日、仕入債務回転期間は23~45日となっており、海外食品メーカーに比べて相対的に売上債権回転期間が長く、仕入債務回転期間が短い傾向にあることが分かる。
食品メーカーのサプライヤー(供給元)にとっては、食品メーカーに対する売上代金の回収が早い(=食品メーカーの仕入債務回転期間が短い)ほうが望ましいわけだが、海外食品メーカーでは大きな購買力を背景に、自社にとって有利な条件で仕入れを行っている。
日本の食品メーカーの仕入債務回転期間が短い背景としては、P/L重視の傾向が強くキャッシュ・フロー経営の視点に乏しかったこと、そしてサプライヤーに対してメーカーが資金的な支援を行ってきたことが挙げられるだろう。売上債権回転期間が長いことについても、販売先の資金繰りを支援するという意図があったと見ることができる。
AB InBevなど海外メーカーからのお金がなかなか入ってこないサプライヤーは、支払いまでの期間が相対的に短い日本メーカーからのお金で資金繰りを賄っている側面がある。サプライヤーは、日本メーカーのおかげで海外メーカーの要求を受け入れることができているわけだ。そのため、日本メーカーが間接的に海外メーカーの資金調達を助けるような構図になっているとの指摘もなされている(一橋大学大学院教授・野間幹晴氏、20年10月22日付日本経済新聞朝刊)。
キャッシュ・フロー経営やB/S効率化の視点を強化し、自社にとっての取引条件を改善していくことは、味の素に限らず日本の食品メーカーの経営課題となっているといえそうだ。
その一方で、棚卸資産回転期間については、グローバル、日本の食品メーカーの双方と比較しても、味の素の水準(約73日)は突出して長い。この課題に対し、味の素では21年3月に「DX-SCM推進に関する中期計画」を公表し、SKU(品目数)の適正化、在庫拠点数の削減、需要予測の高度化と生産の自動化を進めることで棚卸資産回転期間を短縮するとしていた。しかし、21年3月期の約64日と比較して、棚卸資産回転期間は10日弱長期化している。
円ドルの為替レートが21年3月末の約111円から24年3月末には約151円となり円安が進行したことや、原材料価格の上昇も影響しているとはいえ、在庫効率をいかに高められるかが味の素には問われている状況だ。
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