M&Aも駆使して世界一に
ネスレの決算書
続いて、ネスレの決算書(23年12月期)を見ていこう(下図参照)。

図左のB/Sの左側で最も大きな金額を占めているのは無形固定資産(約469億1800万スイスフラン〔以下CHF〕)だ。この大半はのれん(約286億9300万CHF)となっている。ネスレに多額ののれんが計上されているのは、ネスレがこれまで積極的なM&Aを行ってきたことが主な要因だ。
ネスレは、創業間もないころからさまざまなM&Aを繰り返してきたことでも知られる。ここ最近の状況を見ても、17年にはカナダのサプリメントメーカーであるアトリウムイノベーションを、21年にはビタミン剤や健康補助食品を手掛ける米バウンティフルカンパニーの中核ブランドやスポーツ飲料の米ヌーンを、22年にはオーガニックプロテインの米オルゲインを買収している。こうした買収により計上されたのれんが無形固定資産としてB/Sに計上されているのだ。
次いで大きいのは流動資産(約308億5700万CHF)だ。ここには、棚卸資産(約118億9600万CHF)や売上債権及びその他の債権(約109億9500万CHF)などが計上されている。
また、有形固定資産も約304億6700万CHFと大きいが、これはネスレが世界各地に多数の工場を保有しているためだ。
B/Sの右側を見てみると、流動負債が約370億8400万CHF計上されている。この大半を占めているのが、仕入債務及びその他の債務(約192億400万CHF)だ。また、有利子負債も94億1600万CHF計上されている。非流動負債は約530億7900万CHFで、そのうち有利子負債が約458億2500万CHFを占めている。
資本は約363億8700万CHFで、自己資本比率は約29%だ。
図右のP/Lに目を転じると、売上高等(その他の収益を含む)が約933億5100万CHF計上されているのに対し、売上原価は約503億2800万CHF(原価率は約54%)、販管費等(物流費、研究開発費、減損損失などを含む)は約285億300万CHF(販管費率は約31%)となっている。その結果、営業利益は約140億6300万CHFとなっており、売上高営業利益率は約15%という高水準だ。