回転期間とCCCについても見ていこう。
ネスレのB/Sおよびその注記から、棚卸資産は約118億9600万CHF、売上債権は約89億9200万CHF、仕入債務は約141億9500万CHFであることが分かる。これらと売上高(約933億5100万CHF)より、棚卸資産回転期間は約47日、売上債権回転期間は約35日、仕入債務回転期間は約56日と計算できる。CCCは約26日で、味の素の約83日に比べて57日も短い。
ネスレの回転期間は、味の素と比較すると棚卸資産と売上債権において短く、仕入債務では長くなっている。在庫効率と売上債権回収の効率が高いことに加え、サプライヤー(原材料などを供給する企業)に対する支払いまでの期間を長く設定することにより高い運転資本効率を実現しており、その分投資などに必要な資金を確保できているといえる。
回転期間とCCCから見えてくる
味の素の経営課題とは?
ネスレのように「売上債権回転期間が短く、仕入債務回転期間が長い」企業は他にもある。以下の表を見てほしい。

ネスレを含め、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(AB InBev)、ユニリーバといったグローバルでトップレベルにある海外食品メーカーにおいては、売上債権回転期間は25~35日、仕入債務回転期間は56~109日となっている。
CCCはAB InBevではおよそマイナス48日、ユニリーバではおよそマイナス7日といずれもマイナスの水準だ。
CCCがマイナスであるということは、運転資本がマイナスで、仕入れ代金の支払いよりも売上代金の回収が先に行われていることを示す。このようなケースでは、売上高が増加するほど、運転資本のマイナス幅が大きくなり、キャッシュが増加することとなる。
一方、日本の食品メーカーでは「売上債権回転期間が長く、仕入債務回転期間が短い」パターンがみられる。