TOEIC L&Rのスコアを提出不要としたサムスン

 そもそも韓国では、就職時に求められる英語テストのスコアが日本よりも圧倒的に高い。「TOEIC adds to stress for young job seekers」(TOEICは若い求職者のストレスを増大させる、2014年3月26日付The Korea Herald)という記事では、「(TOEIC L&Rが)900点以下だと、他に突出した点がなければ有利とは言えない。安全圏に入るには950点取らないと」といった声が紹介されている。

 実際、サムスンではTOEIC730点が応募の最低基準だったが、応募者の平均レベルは900点超えだったという。さらに、サムスンは2010年にTOEIC L&Rスコアの提出義務をあっさり廃止してしまい、TOEIC Speakingテスト、またはOPIc(Oral Proficiency Interview:全米外国語教育協会による世界標準の会話能力テスト)の成績のみ、提出を義務づけた。

 ビジネスで必要とされる英会話力があるならば、TOEIC L&Rで測るような知識レベルも高いはず、と踏んだのだろう。

テストを目標にしてスピーキングを伸ばす

 筆者からすると、テスト向けの勉強でスピーキング力を伸ばそうというのは、英語学習の理想的な形ではない。とはいえ、英語を学ぶこと自体が大好きな人でない限り、テストのような分かりやすい目標がないと学習のモチベーションが上がらない。目標がないまま漫然とオンライン英会話や英会話アプリでスピーキングの練習をしていても、仕事で使える英語は身に付かない。

 TOEIC S&Wのようなビジネスパーソンを対象としたスピーキングテストのスコア向上を目指して努力し、実際に話す力も伸ばすという韓国の図式は、日本でもまねできる。

 良くできたスピーキングテストは、徐々にアウトプットの負荷を高める出題設定になっている。また、リスニングやリーディングのテストとは違って、唯一の正解がない問題への対策が重要だ。トレーニングを積むと、自分の言葉で話す力が自然に底上げされる。これを利用しない手はない。