ドナルド・トランプ米大統領は先週、大西洋を隔てた米欧間の同盟・友好関係をほぼ崩壊させた。すると、トランプ氏の台頭をあらゆる段階で嘆いてきたいつもの心配性の人たちが勢いを増し、これまでのように熱弁をふるった。だが、それが救いようのないほど無益であるのもこれまでと変わりなかった。一方、トランプ氏が掲げるスローガン「MAGA(米国を再び偉大に)」の支持者たちも声高に同氏の大胆な独創性を称賛していた。同氏は3次元チェスのように複雑な戦略であらゆるルールを破っている。トランプ氏に対して声援を送る人たちも嘆く人たちも一様に見落としていたのは、同氏の対ロシア政策が多くの点で主流だということだ。ドイツ首相を務めたゲアハルト・シュレーダー氏やアンゲラ・メルケル氏と同様、トランプ氏はロシアとの政治的・イデオロギー的な違いに目をつぶり、互恵的な経済関係を築きたいと考えている。バラク・オバマ元米大統領と同じように、米国とロシアの対立は東西冷戦期の時代錯誤的な反響だとトランプ氏は考えている。ジョー・バイデン前米大統領と同様、トランプ氏もロシアとの対立を一時棚上げにしたいと考えている。ロシアと何らかの実用的な取り決めを結ぶことで、ロシアと対決することの痛みや困難、コストを回避するためだ。
【オピニオン】トランプ氏の対ロ政策、新しいわけではない
メルケル、オバマ、バイデンの各氏、そして1940年代のウォレス氏と似通う
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