トランプが欧州をけん制するワケ
ゼレンスキー大統領と大げんかの醜態

 トランプ氏は中国・メキシコ・カナダからの輸入品および鉄鋼・アルミへの関税に加え、「相互関税」に関する大統領覚書に署名した。自動車、半導体、医薬品に25%程度の関税を発動する方針も明らかにしている。

 自動車の関税については、特にEUをターゲットにしているようだ。EUは、デジタル市場法や独占禁止法で米IT企業への締め付けを強める一方、安全保障面では米国との同盟関係を重視している。

 トランプ氏は一方的に、EUは自動車関税を米国と同じ水準に引き下げるべきと主張している。欧州に圧力をかけ、米国からの輸入拡大や防衛負担の引き上げを勝ち取りたいのかもしれない。

 そうした中で取り組んだのが、ウクライナ戦争の停戦だ。ただし、ロシアのプーチン大統領と停戦交渉の開始で合意した際にも、停戦交渉に「欧州の席はない」(米国のケロッグ特使)と述べている。トランプ政権の欧州に対する強硬姿勢が垣間見られる。

 実際、米国のウクライナ支援額は欧州諸国を上回る。トランプ氏は、米国の支援が多いことは不公平であり、ウクライナに鉱物資源の権益譲渡を求め支援金額を回収すると主張した。

 そうして迎えた2月28日、トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領は首脳会談で激しい口論を繰り広げた。両首脳はウクライナの鉱物資源の権益に関する合意文書に署名する予定だったが、署名には至らず、ゼレンスキー氏はトランプ氏の指示でホワイトハウスを後にした。