弾く楽器が変われば、響く音も聴かせたいポイントも変わります。歌い手の自分も含めた演者全員が心を合わせて一体となり、演奏のレベルをより高いものに引き上げていきたい。そのために、演奏者の気持ちを少しでも理解しておきたい。
五木さんはそんな気持ちで、楽器を手にとり、練習を重ねてきたのだと想像するのです。
五木ひろしが貫くプロの流儀
歌謡界を支える深い探求心
そしてさらにお話を聞いて驚いたのは、「自分が生きている歌謡曲の世界は、先人たちが築き上げてきた約100年あまりの歴史があります。私はその中にいる歌手の1人として、その方々がどのような想いで詞を書き、どのように工夫しながらメロディーを作って来たのかを、詳細に勉強しなければいけないと思っているのです」とおっしゃったことです。

草野 仁 著
こんなにも高い理想をもって歌謡曲の世界に生きながら、周囲の全ての方に優しく接している。
私はそんな人が実在しているという事実を知り、「五木さんこそ、歌謡界の大いなる偉人だ」と、深く感じ入りました。
自分ひとりが目立ったり、よい地位で優遇されたりすることを望まず、相手の身になって心を寄せ、その場にいる全員が素晴らしいものを生み出せる場を作っていける。これこそまさにプロが「プロ」たるゆえんです。
五木さんの司会ぶりは、人と人とのコミュニケーションのあるべき姿を見せてくれているように感じます。