
年々普及が進むECサイト。ネットで買い物をし、自宅や職場に送ってもらうことはすっかり日本でも一般的になった。しかし隣国・中国ではさらに普及しており、消費者向けECの市場規模は実に日本の12倍以上、セール期ともなれば中国全土を商品が飛び回る。これほどまでに中国でECが広がっている大きな理由が「ライブコマース」だ。日本ではほとんど普及していない仕組みだが、なぜこれほど中国で大人気なのか、その経緯と理由を解説する。(中国アジアITライター 山谷剛史)
中国では老若男女を問わず人気のEC「ライブコマース」
中国では老若男女が利用している「ライブコマース」。ライブコマースとは、ライブ動画を配信しながらモノを売るという、いわばテレビショッピングのライブ動画版、実演販売のネット版である。生配信なので、視聴者の質問にその場で答えるなどのやり取りもできる。
中国のネット事情を語る上では、しばしば都市と農村の格差が取り上げられる。しかし中国におけるライブコマースは、ネット普及率が低い、高齢者や農村の人々までも巻き込んでいる。もはや先進的なユーザーだけが活用するサービスではないのだ。

普及ぶりは数字にも現れている。中国でライブコマースが人気になって早5年。日本の2023年のB2C(企業対個人)の消費者向けEC市場は25兆円であるのに対し、中国の同年の消費者向けEC市場は15兆元(約315兆円、以下1元=21円で換算)、そのうちの4兆3000億元(約90兆3000万円)がライブコマースとなっている。利用者は中国のネット利用者のほぼ半分に当たる約6億人にまで増え、ライバー(配信者)は本業は337万人、副業を兼ねれば1600万人もいる。