このように中国ライブコマースの市場規模は非常に大きく、ライバーも多いわけだが、ライバーで稼げているのはほんの一部だ。EC売上が最も高くなるダブルイレブン(11月11日、独身者の日)セールの時だけで1000億円以上売り上げるような超有名ライバーもいる。しかし、そうした人はごく一部で、月収が8000元(約16万8000円)を超えるのはライバー全体のわずか13.7%のみ。36.9%は1000元(約2万1000円)以下、31.0%は1000~3000元(約2万1000~6万3000円)であり、ライバーの3分の2以上は生活していくには不十分な売上しか得られていない。
利用も配信も簡単、テレビショッピングよりも臨場感がある
ライブコマースは、スマートフォン用の定番アプリ「抖音(ドウイン、中国向けTikTok)」やECアプリ「淘宝(タオバオ)」などから利用できる。つまり新たにアプリを入れる必要なく参加でき、アプリ内で買い物が完結する。一方、日本でライブコマースを利用するには複数のステップを要するものが多く(各サービスによって異なるので一概にはいえないが)、中国に比べるとやや手間がかかる。
ライブコマースの配信は、スマートフォンと快適なネット環境だけあれば最低限でき、スタジオ配信であれば、照明や明るさを見るモニター用ディスプレイなどが加わる。テレビショッピングと似ているようで違う点は、家や店やスタジオや工場や農場の生産現場といった屋内で撮るだけでなく、外出先から撮る、移動先で撮る、店を巡って商品を紹介しながら撮るということも可能だ。
中国だけでなく、日本を訪れて日本の商品を販売する人もいる。なぜ日本の屋外から配信するかというと、「日本から本物の商品を販売している」というアピールができるからだ。

中国では、農村でライブコマースを配信し、農場の商品やその地方の特産品を販売するケースが珍しくない。人里離れた山村では、「こんなこともできる」とばかりに国営キャリアや大手ネット企業が技術力を発揮する。
例えば、人里離れた農村から農民がライブコマースを行う時にキャリアが現地のインフラをバックアップする、中国語の標準語(普通語)が苦手な少数民族の人々が地場商品を売るために、ファーウェイが本人そっくりなデジタルキャラクターを作り、本人の代わりにキャラクターが普通語を話してライブコマースで物品を販売するといったテクノロジーの導入・実験場としてライブコマースが活用されたこともある。中国ならではの例といえよう。
