自転車を好きなところで借りて返せるシェアサイクル、飲食店から食べ物を運んでくれるフードデリバリー、タクシーのように利用できるライドシェア……中国では多くの「シェア」サービスが普及しており、日本ではまだあまり知られていないものもある。今回は「荷物版Uber」ともいえる香港発のサービス・Lalamoveを紹介する。(中国アジアITライター 山谷剛史)
「ちょっと荷物を運んで」に応えるUber的サービス・Lalamove
中国の街では、単色で統一され道端にずらっと置かれたシェアサイクルや、黄色や青のスタジャンを着たデリバリースタッフが弁当や商品が入った袋を抱えて行き交う光景を日常的に見かける。そんな中、車道には時折、オレンジ色のシールが大きく貼られたワゴン車やトラックが走っている。これが「貨拉拉」(ホーラーラー)、英語名Lalamove(ララムーブ)だ。
UberやDidiが人を乗せるライドシェア(配車)であるのに対し、Lalamoveは荷物を運ぶライドシェア、つまりアプリを利用した宅配サービスだ。利用者が利用したい配送区間をアプリで指定すると、それに応じるドライバーがいればシステムがルートと料金を算出し、利用者がOKすれば、指定時間にドライバーがやってきて荷物を車に積み込み運んでくれる、というサービスである。オフィシャルサイトなどの広報写真では新しい車両が写っているが、実際には渋いおじさんドライバーが年季の入った車両で対応してくれることが多い。
Lalamoveは2013年に香港で誕生した企業だ。翌2014年に中国本土と東南アジアでサービスをリリースする。中国で2014年というと、Didiなどの配車サービスや、アリペイやウィーチャットペイといったキャッシュレスが流行りだした年で、シェアサイクルが普及するのはもう少し後になる。シェアサービスが始まろうとした時にサービスがローンチされた物流会社だ。
それ以前の「ちょっとモノを運んでほしい」という時にはどうしていたのかというと、中国では白タクがいくらでもいたのである。車に乗ってぼーっとしている人に声をかけて、モノを運んでほしいといえばやってくれたのだ。他にも「明日の早朝に空港に行くから家の前まで来てくれ」と言えば、タクシー代わりにもなった。おそらく現在も探せば対応してくれるだろうが、当時はそれが当たり前だった。表向きにはないけれど、実際はものすごく身近にある存在の白タクドライバーが、LalamoveなりDidiなりでDX化され、ドライバーは街中から案件を取ることができ、客は事前に価格が分かった上でだまされる心配なく注文できるようになったのだ。