このことからわかるように、外国語が多少しゃべれるようになっても、語彙力を増強しないかぎり、原書で小説や人生論、論文などが読めるわけではないのです。
たとえば、韓国語がペラペラになりたいから、と学び始めたとしましょう。「アンニョンハセヨ」(こんにちは)や「ケンチャナヨ」(大丈夫ですよ)など片言の韓国語をしゃべるのは難しいことではありません。
しかし、その人が「안녕하세요」や「괜찮아요」という文字を読めるでしょうか?
片言の韓国語がしゃべれるようになっても、それだけのこと。文字が読めるようになるにはそれなりに努力が必要ですが、原書で小説や人生論、論文が読めるようになれば、素晴らしい可能性が開けてきます。
外国語学習に挫折した経験のある人たちに勧めたいのは、「読む楽しみ」「聴く楽しみ」を見つけることです。読んだり聴いたりする機会はだれにでも、いくらでも、簡単に作れるからです。
読解力・聴解力を身につければ、今やネット経由で海外から洋書を簡単に取り寄せられますし、ユーチューブなどで海外の動画が見放題です。
それだけではありません。海外の大学の講座も無料で受講でき、学位を取ることもできるのです。
ちなみに私は東京から一歩も出ずロンドン大学の学位を取得しましたし、カルフォルニア大学やジュネーブ大学などの講座を修了しました。外国語を読んだり聴いたりできれば、ただ楽しむだけでなく、外国語を通して学問をすることで自分を高めることもできるのです。
ただ、誤解してほしくないのは、スピーキングの技能を磨かなくていいと主張しているわけではない、ということです。
4技能は相互に関連するため、スピーキングの技能を磨くと他の技能も磨かれることは私も実感しています。ただ、スピーキングに関心のない人は、無理に磨く必要はありません。スピーキングができなくても「英語が使える」ことはありますし、ほとんどの人はそれで十分だからです。
日本人が外国語の力を磨こうと思えば、リーディングとリスニングを重点的に磨くのがよいでしょう。読む楽しみ、聴く楽しみを味わえるからです。
余力があればライティング、さらに余力があればスピーキングを磨きましょう。もともとスピーキングに興味のない人は、あまり無理をしても続けるのは難しいので、リーディングとリスニングを磨くといいでしょう。