「そういうことか!」言われて納得

わかる人はすぐに気づいたかもしれない。これはサイゼリヤの「ミラノ風ドリア」の写真だが、日本のサイゼリヤで提供される楕円形の皿ではなく、円に近い形をしている。
実は台湾のサイゼリヤのもので、メニュー名は「米蘭風肉醤焗烤飯」。直訳すると「ミラノ風ミートソースドリア」だ。
ほとんどのサイゼリヤユーザーが知る事実だが、「ミラノ風ドリア」は実際のミラノには存在しない。「ミラノ風」という名称は付いているものの、ミラノ発祥ではないのだ。
サイゼリヤの元社長・堀埜一成氏も率直に明かしている。
「実は、ミラノ風ドリアというのはサイゼリヤの完全オリジナル商品で、イタリアのミラノに行ってもそんなものはありません。ナポリタンが日本発祥でナポリとは何の関係もないように、ミラノ風ドリアもミラノとは無関係なのです」
(堀埜一成『サイゼリヤ元社長が教える 年間客数2億人の経営術』)
そもそもドリア自体、イタリア発祥ではなく、日本で独自に発展した料理だ。「ミラノ風」という名称はフィクションだが、ドリアをイタリア料理と見なすこと自体もフィクションに近い。大胆不敵な経営戦略といえる。
日本ではユーモアとして受け入れられたメニュー名を、海外展開する際にもそのまま採用している点が面白すぎる。
しかし、単なる遊び心ではない。このネーミングを海外でもあえて使用する決断の背景には、明確な経営戦略がある。ブランドイメージの統一か、あるいは日本独自の食文化を広める意図か。その狙いについて、改めて考察したい。
先に述べたが、「ミラノ風」も「ドリア」も、本場のイタリア料理かと問われれば、そうとは言い難い。しかし、ネーミングによってサイゼリヤが「イタリアンレストランは本場イタリアに起源を求めるべき」という固定観念から自由になっているのだ。