カーライル、ベイン、KKRの「ビッグ3」に対抗の外資系が続々参入!日本企業“爆買い”の黄金期に入ったPEファンド業界【26社の最新カオスマップ】Photo:PIXTA, Flashpop/gettyimages

巨額の海外マネーの受け皿となり、膨張を続ける日本のプライベートエクイティ(PE)市場は「黄金期」に入ったとされる。まだ投資に回していない待機資金の累積額は10兆円規模に積み上がり、日本企業の“爆買い”が今後加速するのは間違いない。ではPE市場で注目すべきプレーヤーは一体誰か。特集『プライベートエクイティ 金融最強エリートの正体』の#1では、26社の最新カオスマップで、知られざる業界の構図と課題を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

米ベインは「5年で5兆円投資」
目標を超えるペースで投資加速中

 日本のプライベートエクイティ(PE)市場は今後10年間の「黄金期」に入る──。米PEファンド大手、カーライルの日本共同代表を務める山田和広氏はそう予言する。

 カーライルが日本に進出した2000年当時、日本でPEファンドの存在はほとんど知られておらず、「ハゲタカ」のイメージからか企業経営者とのアポイントメントすら入らなかった。投資対象の案件も少なく、鳴かず飛ばずのまま撤退したファンドも数多い。

 その状況が今、様変わりした。

 後継者難で事業を承継したいオーナー企業経営者、非中核事業を売却したい大企業経営者らが、その譲渡先にPEファンドを選ぶ事例が増えている。PBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業への圧力が強まり、アクティビストの活動も活発化した。

 ベネッセホールディングスや富士ソフトなど、PEファンドと組んでMBO(経営陣による買収)を選び、上場廃止する企業も増加傾向だ。米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の日本法人であるKKRジャパンの平野博文社長は「事業会社が『選択と集中』を行うに当たり、PEファンドを使えるツールだと思ってもらえれば、市場が今後も伸びていく余地は大きい」と語る。

 東芝と日立製作所からスピンオフ(分離・独立)した東芝メモリ(現キオクシア)と日立金属(現プロテリアル)、そしてセブン&アイ・ホールディングスが今年売却を公表したヨーク・ホールディングスの買い手は、いずれも米PEファンドのベインキャピタルだ。

 06年に日本進出したベインの累積投資額は、企業価値ベースで7.6兆円。うち東芝メモリを買収した18年以降が約9割の6.5兆円を占める。明らかに投資ペースを加速させており、同社の末包昌司・日本プライベート・エクイティ共同責任者は「5年で5兆円の企業に投資する目標を超えるペースで投資実行中だ」と明かす。

 カーライル、KKR、ベインは、その実績や運用規模からして日本のPEファンド「ビッグ3」だ。だが無論、彼らだけが業界のプレーヤーではない。黄金期を迎えた日本のPE市場を開拓すべく、続々と海外の超大手PEファンドが参入し始めている。

 さながらゴールデンラッシュの様相を呈する日本のPE市場。カネだけでなく、一流のコンサルティングファームや投資銀行からエリート人材を吸収し続けるPEファンドとは、一体何者か。

 最新の業界構図と浮かび上がる課題を、業界キーパーソンへの取材を基に次ページで明らかにする。