ミラノ風ドリアはミラノにない!だが…

この写真、何かがおかしい…サイゼリヤ「ミラノ風ドリア」の異変、あなたは気づけますか?Photo by Kenichi Ogura

 メニューの中心に、イタリア料理とは言い難い一品が堂々と並ぶことで、社員が新たなメニューを考案する際も、「サイゼリヤのノリ」を重視し、柔軟な発想を維持できる。

 こういった手法は「カテゴリー・エクステンション(Category Extension)」と呼ばれる。既存のカテゴリーに新たな意味を加えることでブランド価値を広げる戦略だ。

 とはいえ、ミラノ風ドリアという名前は「あまり真剣な顔で考えないでほしい、食事は気楽なものでしょう?」というサイゼリヤからの呼びかけのようにすら私は感じるのである。

「ミラノ風ドリア」という名称に含まれる「ミラノ」にも注目したい。「ミラノ」と聞いて、イタリアについて詳しくない日本人が抱くイメージを想像してみる。

 プラダ(PRADA)、アルマーニ(ARMANI)など高級ブランドの発祥の地であり、響きには洗練された印象がある。漠然と「かっこいい」「上質」といったイメージを持つ人も少なくない。

 イタリアの都市と料理の関係を見ても、ナポリはピザ、ボローニャはミートソース(ボロネーゼ)、パルマは生ハムといったように、都市ごとに代表的な料理が存在する。しかし、ミラノには特定の料理が紐づいていない。言い換えれば、白紙の状態から自由にイメージをつくり出せる。

「ミラノ風ドリア」のネーミングには、この点を巧みに活用した側面がある。ただし、サイゼリヤの経営陣がそこまで戦略的に考えたわけではないだろう。偶然生まれた名称が、結果的にマーケティング効果を持つに至った可能性が高い。

「ミラノ風ドリア」という言葉が響きの良さ以上に、消費者の意識を巧みにコントロールする力を持つことは間違いない。

 台湾の台北市の中心にあったサイゼリヤは、よくお客さんが入っていた。値段は、総じて日本のサイゼリヤより高めに設定してある。

 日本では100円のグラスワインが、台湾では約250円。ミラノ風ドリアは日本では300円、台湾では約540円。ソーセージピザが日本は400円、台湾のスペイン風チョリソーピザは約580円だ。1.5〜2倍ほどの値付けになっている。

 余談だが、台北に遊びに来た日本人の多くが感じるのは、飲食店に生野菜のメニューがほとんどないことだ。繊維質はフルーツからとるようにしているのだろうか。筆者はサラダを食べたくて、台北のサイゼリヤに駆け込んでしまった。

 こうした値付けは、同じく台湾に進出した丸亀製麺とは、まったく違う。