内部通報窓口が機能している会社に
共通する3つのこと

1.会社の本気度が社員に示される

 第一に重要なのは、企業が「通報窓口を本気で活用したい」という意思を明確に示すことである。形だけの設置に終わらせず、社員に“本気度”を伝える工夫が必要だ。

 具体例を挙げよう。

 メーカーのA社では、社内のあらゆる掲示板やイントラネットに通報窓口の連絡先を大きく掲示し、さらに窓口担当者と外部弁護士の写真や経歴を併せて公表している。コンプライアンス研修のたびに通報の仕組みを丁寧に説明し、万が一の際には社外の弁護士に直接相談できる手立てを社内規程で明確化している。

 こうした取り組みによって、「万一、不正や不祥事を見つけたらすぐ報告してほしい」「通報者を守る仕組みがある」という会社の真摯(しんし)な姿勢が社員に伝わり、結果的に通報も定期的にあるという。

 また、IT企業のB社では、新卒を含む全社員を対象としたコンプライアンス研修を毎年必ず開催しており、その際には事例研究形式で「どのような場合に通報すべきか」「通報した結果どのような対応がなされるのか」を具体的に学ばせている。通報の件数や対応状況は開示可能な範囲で社外役員も同席するコンプライアンス委員会の場で公表し、経営陣のコミットメントを社内外に示している。

 このように「ここまで周知している以上、会社としても通報にいい加減な対応はできない」という状況を作り出し、社員の不安を軽減することが大切だ。実際に多くの企業を見ても、“本気度”が伝わっている会社ほど、通報窓口への信頼度が高いと感じる。

 逆に言えば、一応形だけ窓口を設置してはいるものの、本当は何も通報してほしくないと思っている会社では、窓口に関する情報は、まるで「見つけないで」と言わんばかりに、パンフレット等の目立たないところに小さく印刷されているだけだ。

2.適切な調査能力

 次に、問題行為を秘密裏に、かつ適切に調査し、公平で客観的な評価を下せるだけの調査能力が必要だ。

 調査能力が不十分な場合にはこんなことが起こり得る。