グループの各事業部門は
「費用負担なしの発注」ができる
実際に業務を依頼する顧客(日揮グループの各事業部門)は、JPTに対して「費用負担なしの発注」ができる。どういうことか。
阿渡氏はその仕組みについて「各社の人事部門が人件費を支払い、事業部門はその予算の範囲内でJPTに対して気軽に依頼ができる仕組みにしている」と説明する。
顧客である各事業部門から業務依頼が来ると、管理者はその内容と社員のスキルがマッチするか確認。マッチすれば業務を引き受け、社員にアサインする。現在は業務依頼が立て込んでおり、順番待ちの状態だ。「各社の事業部門は本当に自由に依頼してくる。『これができたら便利だよね』というアイデアレベルのものから、『このデータを分析してほしい』という具体的な依頼まで様々」
予算に対する業務量の調整は行っていない。納期の制約がないので、予算に対して業務量を厳密に管理する必要がないのだ。「ただ、今後は『もっと予算が欲しい』という交渉もしたい。現在はJPTがもらっている予算以上の成果を出していると自負しており、それを数字で示して予算増額を求め、社員への還元も増やしたい」と阿渡氏は意気込む。
このビジネスモデルはJPTを通じて法定雇用率を達成しつつ、グループにとって価値のあるIT業務支援を得られるという二重のメリットがあり、かつ多くの大企業でも応用可能だと阿渡氏は言う。「製造業なら製造現場のIoT化支援、小売業なら顧客データ分析など、どの業界にも『やりたいけれど手が回らない』IT関連の業務はある。そこに特性を持つ人々の力を活かせる仕組みを作れば、Win-Winの関係が築ける」
大企業の場合、障害者雇用のために支払う費用が必ず発生する。それを障害者雇用納付金として国に納めるか、JPTのように障害者雇用の仕組みを作るかの違いなのだ。
多くの企業では、障害者雇用部門が自ら収益を上げなければならないというプレッシャーがあるため、納期などのストレスも大きくなり、発達特性のある人が働きにくくなってしまう。その点、このモデルは「収益のプレッシャーからの解放」と「価値ある仕事の提供」を両立できる点が強みだ。ただし、管理コストが高くつくという課題はある。