「発達障害のある社員」の活躍に成功する6つのカギとは?電通総研で“1年後の定着率が9割以上”の裏側写真はイメージです Photo:PIXTA 

ニューロダイバーシティの活用に関心はあるものの、「どこから手をつければよいのか」とためらう企業は少なくない。しかし、国内でも少しずつ動きが始まっている。企業を取材すると、採用や業務設計の試行錯誤が分かり、これから導入を検討する企業にとってのヒントが見えてきた。
本連載では、2024年秋に日本総合研究所の木村智行氏らが開始した「ニューロダイバーシティ・マネジメント」に関するPDCAの試みをベースに、企業の実践的な取り組みや課題を全5回にわたって掘り下げる。第3回は電通総研の事例とともに、複数社の取り組みから浮かび上がってきた採用後の工夫について具体的に紹介する。(取材・構成/ライター 奥田由意、ダイヤモンド・ライフ編集部)

ニューロダイバーシティに取り組みたいが
踏み出せない企業はどうするか

 これまで2回にわたって、ニューロダイバーシティとは何か、海外事例や2024年秋に始まった日本総研の木村智行氏が企業と協働する発達特性を高度・先端IT領域で活かす「ニューロダイバーシティマネジメント研究会」発足の経緯などについて解説してきた。

 国内企業でも、ニューロダイバーシティの活用を導入してみたいが、どこから始めればいいか分からず、ためらっている大企業は少なくないだろう。そんな企業にとっては、まさに取り組み始めた企業の例が参考になるに違いない。

 IT企業である電通総研は、障害者雇用に約30年の実績を持つ。それでも、発達特性のある人の能力を生かすニューロダイバーシティについては「なかなか手がつけられていなかった」と語るのはコーポレート本部本部長補佐の佐藤数明氏だ。しかし、24年から前述の研究会に参加し、本格的に取り組み始めた。

 多様性を尊重して社会や組織に活かそうとするダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の視点から、特性を持つ人材の活躍機会を作ることが重要だという認識のもと、昨今の人材不足にも対応して戦力として活躍してもらう機会を作らなければならないと考えていたと言う。

 具体的にはどのような業務を担当してもらうのが適切なのか。次ページからは、社内の検討プロセスの詳細についても紹介していこう。