将来的には特例子会社をなくし
ビジネスモデルを親会社に逆輸入したい
将来的な発展可能性として、阿渡氏は3つの方向性を挙げている。1つ目は「チーム作業への挑戦」だ。現在は1人1プロジェクトが基本だが、納期があるプロジェクトを分担して進める仕事も受け、受注できる案件の幅や協業の可能性を広げる。現在は知り合いのつてを通じて少額から始めているが、今後は本格的に外部受注も増やしていく予定だ。
社員のなかにはもともとチーム仕事でも大丈夫な人もいたり、入社直後は1人1プロジェクトで安定して働き、経験値が上がって、自信がつき、チームでの仕事をしてみたいという社員も出てきた。
2つ目は前述した「内部からの管理者登用」だ。自己の特性をよく理解し、自己管理ができる人から段階的に登用する。すでに素養のある社員も出てきている。
3つ目は「ノウハウの商品化と逆輸入」だ。阿渡氏は、最終的にJPTのやり方を親会社の日揮ホールディングスに『逆輸入』することが理想だと考えている。わざわざ特例子会社を作らなくても、巨体の親会社で同じように働ける環境ができれば、それこそが本当のインクルージョン(包摂)だからだ。
また、JPTのビジネスモデルやノウハウをパッケージ化して、他社に展開することも考えている。事実、メディアでの紹介を機に、多くの企業や大学の研究者から「どうやったらできるのか」という質問が絶えないという。
前編でも述べたとおり、発達特性があって技術力の高い人は多い。採用のたびにJPTには6〜7倍と定員をはるかに上回る応募があり、「全員雇いたいが採りきれていない」のが現状だ。同じビジネスモデルの会社がもっと増えれば、そういう人たちの技術力を取りこぼすこともなくなる。
現在のモデルは安定しているが、阿渡氏の射程は長い。「将来的には自分たちでより多くの収益を生み出したい。具体的には、社外からの受託開発を増やし、その収益で社員の待遇をさらに改善したり、さらに多くの人を雇用したりする」
そのためにも、まずはグループ内での評価と信頼を高め、並行して外部案件のノウハウを蓄積していく。その上で、徐々に外部比率を高めていくイメージだ。「『JPTに頼めば質の高いITソリューションが得られる』という評判を広げていきたい」
25年度からは日本総研と協力して、興味のある企業と協働するプロジェクトも検討している。企業の担当者が出向や研修という形で一緒にノウハウを身につけるという構想だ。実際に、どのように仕事をしているのか、どのようなコミュニケーションが行われているのか、どう業務を切り分けているのかを体験することがもっとも効果的だと阿渡氏。
実際に働いてみて『本当にできるんだ』という実感を持ってもらうことを重視したいと言う。「やってみたいが、難しそうと思っている企業には『構えすぎなくても大丈夫』と言いたい。制度さえ整えれば、後は何とでもなる」