
発達障害を理解し、人材をマネジメントしたり過ごしやすい環境を作ったりするためのリアルな課題、工夫について専門家の意見や企業による最新の取り組み(「ニューロダイバーシティ〈脳・神経の多様性〉」の活用)を紹介する短期連載「多様化する職場『発達障害』」。第4回と第5回では、先端IT領域で発達障害を中心に43名のITエンジニアが働く日揮グループの特例子会社である日揮パラレルテクノロジーズの先進的な取り組みを紹介する。業務の質の高さとスピード感から、今では、グループ会社が外注していたIT化業務を同社が引き受けることも珍しくなくなっているという。第4回では同社の起業メンバーでもある阿渡健太社長に、どのような工夫で発達障害の人たちの能力を引き出しているのかを聞いた。(取材・構成/ライター 奥田由意、ダイヤモンド・ライフ編集部)
障害者雇用とIT人材不足
2つの課題を一挙に解決
日揮パラレルテクノロジーズ(JPT)が誕生したのは、2つの課題があり、それを組み合わせた結果だったと同社の代表取締役社長・阿渡健太氏は語る。
日揮グループは、主にプラント建設などを手掛ける総合エンジニアリング会社を傘下に持つ企業グループ。2017年頃から、プラントの設計・調達・建設業務を遂行する際のDX化を進めていたが、当時はIT人材が少なかった。そうした折、19年10月に日揮は分社化し、日揮ホールディングス、日揮グローバル、日揮株式会社の3社に分かれた。この分社化によって予期せぬ問題が浮上した。
特に海外のプラント建設を担う日揮グローバルでは、法で定められた障害者雇用数が極端に低下。ハローワークから行政指導が入り、改善を求められたのだ。人事部で採用担当だった阿渡氏と成川潤氏(JPT前社長)は、障害者の採用活動をしたが、1年たっても1人も採用できなかった。
日揮グローバルで求めるスキルは高く、英語ができ、かつ他の社員と同様の仕事内容を任せられる障害者は他社との取り合いで見つからなかったのだ。
両氏は状況打開には抜本的な改革が必要と検討を重ね、他の特例子会社を何社か見学した。その結果、多くの場合、コピー取りや名刺作り、野菜栽培などが多いという印象を持った。
自身も障害者雇用で入社している阿渡氏は「多くの障害者は最初、人事や総務といった部署に配属されることが多く、『決まった仕事内容』では工夫のしどころが少なく、面白さを感じづらい。そして低賃金という課題もある。本当の能力を発揮できていない人が多いという現実がある」と語る。