統合が破談した日産とホンダ
それぞれが歩む道とは
米欧勢と比較すると、わが国の自動車メーカーは今のところ健闘しているといえる。トヨタ自動車が典型例だが、全方位型の事業戦略を取ることで、相応の収益を確保した。ただ、今後の環境変化を考えると楽観はできない。
中国では、不動産バブルの崩壊もありデフレ圧力が上昇している。それに伴い、消費者は、価格帯が低い自国メーカーのモデルを選好する傾向だ。政策支援も追い風となり、IT大手のシャオミは2025年のEV納車目標を前年から2倍強の35万台に引き上げた。
一方、トランプ政権の相互関税や自動車関税のリスクは、重要な懸念材料だ。米中での事業環境の変化に対応するためにも、経営統合が破談になったホンダと日産、および三菱自動車は、各自が必要な戦略を実行し始めた。
三菱自動車とホンハイの提携報道はその一例といえる。三菱自動車はこれまで強みだったASEAN市場で、中国勢との価格競争に負けてシェアを落としている。今後、いかに巻き返せるかが社運を握っているといっても過言ではない。
日産は4月1日付でイヴァン・エスピノーサ氏が新社長に就任するが、新経営体制はある意味、期待と不安が同居する状況だ。一方、三菱自動車は、筆頭株主である日産の了解を取り付けたうえでホンハイとの協業を進め、収益力の立て直しを急ぐためにホンハイと協業するとみられる。
協業が実現すれば、ホンハイは台湾でEV乗用車を受託生産し、三菱自動車はそれを自社ブランドに加え、オーストラリアやニュージーランド市場に投入するとみられる。
他方、ホンダは、米国事業の体制を強化する。米国においてホンダが、トヨタからHV向けのバッテリーを調達すると報じられた。米中の対立や政策リスク、事業環境の変化に対応するため、ホンダがトヨタとの連携を重視するとの見方もある。
日産も米国事業の立て直しを急いでいる。フォードと連携する韓国SKオンは、日産の米国工場に車載用バッテリーを供給すると発表した。今後、フォードと日産がEVの車体(プラットフォーム)、ソフトウエア開発で連携することもあるかもしれない。