要は少しのプレッシャーに飲み込まれ、自分の力を最大限発揮できないのです。
「どれだけ苦しい場面でも、僕は全力でやり続けるぞ!」とチームを引っ張るような子がいないなと思ったとき、「あっ、やっぱり何か新しい形の"根性野球”って必要かも」と感じました。
そして、すべてにおいて、やり切ることなく諦めてしまう、辛くなったらやめてしまう、そういう「弱さ」を払しょくし、自分が限界だって思うところからそれに耐える、逃げない忍耐力を身につけるために、効果的な練習はないかと考えたのです。
「辛い、もう辞めたい」ってなった場所を覚えておこう
私たちのグラウンドには、センターの後ろに約20メートルの「心臓破りの坂」があります。ここを「根性坂」と名付け坂道ダッシュを始めることにしました。
子どもたちを坂の下に集めます。
辻「今、絶対に頂上まで全力で走ろうって思っているやろ?」
選手「思ってます!」
辻「でも、途中でやめよう、辛いなって必ずなると思う……。そうしたら、その場所を教えてほしい」
子どもたちには、その瞬間に「来た!」と叫んでほしいと伝えました。そして、いつもだったら力を「抜く」であろう限界の場所から、あと2歩、3歩、全力で走れるかどうか。そういうチャレンジをやってみようと。
私は子どもたちが「来た~!」と叫んだら、振り向いて見るようにしました。
いわゆる旧来の「根性野球」では、「絶対に、最後まで全力で走り抜け!」と大人がすべてを課していたと思います。しかし、この練習は違います。
子どもたちが自分自身で限界を作って、頭に「もう無理だ……やめよう」と浮かんでくる。それは仕方ありません。でもそこまでの距離をもっと伸ばしていこう、と。
「もう無理だ……やめよう」っていうのをどんどん先に延ばしていこう、と。