一家の遺伝物質は、コロラド大学健康科学センターや国立精神保健研究所や複数の大手製薬会社によって解析されてきた。そのような調査の対象者はすべてそうなのだが、彼らの参加も常に秘密にされてきた。
だが、今や40年近くに及ぶ研究の後、ギャルヴィン一家の貢献は、ついにはっきりと目にすることができるようになった。彼らの遺伝物質のサンプルは、統合失調症の理解を進めるのを助ける研究の基礎を成している。
研究者は、一家のDNAを解析し、一般大衆の遺伝子サンプルと比較することで、統合失調症の治療や予測、さらには予防においてさえ、大きな前進を遂げようとしている。
ギャルヴィン一家は最近まで、他人の役に立っていることをまったく知らなかった。自らの境遇が、一部の研究者の間に、前途に対する大きな期待を生み出したことに気づいていなかった。

だが、一家から科学が学んだことは、彼らの物語の、ほんの一部でしかない。その物語は、子供たちの親のミミとドンから始まる。2人の生活は、無限の希望と自信にあふれて幕を開けたものの、頓挫し、悲劇と混乱と絶望に陥る羽目になった。
一方、子供たち──リンジーとマーガレットと10人の兄──の物語は、もとから常にそれとは違うものについての物語だった。彼らの子供時代がアメリカンドリームを歪んだ鏡に映したものだったなら、彼らの物語は、その鏡に映った像が打ち砕かれた後に現れたものにまつわる物語だった。
その物語は、今は大人になって自分たちの子供時代の謎を調べ、親たちの夢の断片を継ぎ合わせ、何か新しいものにまとめ上げようとしている子供たちについてのものだ。
それは自分の兄弟たち、すなわち世間の大半が無価値に等しいと判断した人々の中に、人間性を再発見することについての物語だ。
それは、想像しうる事実上すべての形で最悪の出来事が起こった後でさえ、家族であるとは何を意味するかを理解する新しい方法を見つけることについての物語なのだ。